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標準施工仕様と食い違う恐れも

 断熱防水層が剥がれた原因としては、マニュアルに則さない仕様で施工していたことも考えられる。「押し出し法ポリスチレンフォーム」を断熱材として使っていたとみられるからだ。

 押し出し法ポリスチレンフォームを適正な溶融温度のアスファルトで施工すると、部分的に熱で溶ける恐れがある。そうならないようにアスファルトの溶融温度を下げて施工すると、接着強度が低下する。内山技術主幹は「どちらも耐風圧性能の低下につながる」と話す。

 国土交通省の公共建築工事標準仕様書や断熱材メーカーが作成する施工マニュアルでは、耐熱性能を付与した「硬質ウレタンフォーム」を指定しており、耐熱性能が低い押し出し法ポリスチレンフォームを指定外としている。なお、剥がれたのが押し出し法ポリスチレンフォームだと推定した理由は、断熱材が水色だったからだ。硬質ウレタンフォームは灰色なので、現場の様子と食い違う。

18年の台風で防水層の被害が多発

 屋上の断熱防水層が強風で剥がれる被害は、18年の台風21号でも複数発生している。台風21号による防水被害の調査ワーキンググループ(主査は東京工業大学の田中享二名誉教授)が実施した防水材メーカーへのアンケートでは、54棟の建物で屋上防水層が被害を受け、このうち54%が断熱材付きだった。

2018年の台風21号による強風で被害を受けた屋上防水層の仕様の内訳。「断熱材あり」が「断熱材なし」よりも多かった(資料:日本建築学会)
2018年の台風21号による強風で被害を受けた屋上防水層の仕様の内訳。「断熱材あり」が「断熱材なし」よりも多かった(資料:日本建築学会)
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 断熱材付き防水層の被害が多いのは、防水層を構成する各層のうち、断熱材と躯体の界面の接着強度が最も低いからだと考えられる。屋上の断熱防水層の耐風圧性能には建築基準法の規定が適用される。防水材メーカーは法適合に必要な接着剤の使用量などを施工マニュアルに記載している。しかし、接着剤をどのように塗布するかといった施工に関する記載が十分でないケースも散見される 。

 内山技術主幹は、「施工上の注意点は接着剤の使用量以外にも多数ある。例えば、風圧が大きくなる隅角部の接着方法や、アスファルトが早く冷める外気温の低い時期の施工方法などを示す必要がある 」と指摘する。

 台風21号では、既存の屋上防水層を残して新たな防水層を重ねた改修事例で、既存の防水層ごと剥離したケースも複数報告された。日本建築学会は改修時に既存防水層の耐風圧性能を評価する方法について、防水工事運営委員会に「既存防水層耐風性評価研究WG」を立ち上げて検討を進めている。