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 ライフスタイルブランドを展開するSANU(東京・台東)は2021年4月15日、自然の中にもう1つの家を持つサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」の詳細なプランを発表し、同日から会員の申し込みを開始した。独自に開発した環境配慮型建築「SANU CABIN」に月額5万5000円(税込み)で滞在可能なサービスだ。

「SANU CABIN」の外観イメージ(資料:SANU)
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「SANU CABIN」の平面図(資料:SANU)
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 SANU CABINは室内60m2、テラス13m2で、キッチンやワークスペース、風呂・トイレ、寝室など、利用者が「生活」できる設備を備える。ホテルのようにサービスを受けるのではなく、「住まい」として生活の一部となるようなしつらえを採用した。

「SANU CABIN」の内観イメージ(資料:SANU)
「SANU CABIN」の内観イメージ(資料:SANU)
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 インテリアには自然と調和する曲線を多く取り入れる。全て国産木材を使用するほか、リサイクルコンクリートや瓦の廃材を利用した素材など、サステナブルな材料を多く使用している。

 自然環境への負荷を最小化した工法も特徴の1つ。プレファブリケーションによって、1つひとつの部材を分解可能なデザインとしたほか、基礎杭で建物を持ち上げる高床式の採用で土壌への負荷を軽減する。事業環境の変化や土地の制約条件などによって移動が必要になった場合でも、2週間程度で解体し、別の場所で再利用することができる。同社はこうした建築のあり方を「サーキュラー(循環型)建築」と呼ぶ。

 こうした取り組みによって、従来型の工法に比べて工期を半減、CO2排出量を30%削減するほか、コンクリートの使用量を80%削減する。

 総開発費用は約20億円。21年度内に5拠点(40棟)を一気にオープンさせる。その後、22年夏頃までに新たに5拠点を開発し、合計10拠点を展開する。候補地は白樺湖近傍(長野県)、みなかみ(群馬県)、北軽井沢(群馬県)、山中湖近傍(山梨県)、河口湖近傍(山梨県)、八ヶ岳南麓(山梨県)などを予定している。いずれも首都圏から片道2時間程度でアクセスできる立地だ。

 料金プランは、月額会費が5万5000円(税込)で、全国のSANU CABINに滞在可能。宿泊料は月曜日〜木曜日は無料、金曜日〜日曜日と祝・祝前日が1泊1部屋5500円(税込)となる。1人が会員であれば家族・友人など合計4人までが宿泊できる。

 会員数には上限を設ける。21年4月15日から7月31日まで先行申し込みを受け付け、8月に抽選結果を通知する。会員による予約開始は9月を予定している。


   改めて、SANUが目指す世界観と、サブスクリプションサービスの詳細について、SANUで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める福島弦氏と、代表取締役Founder/Brand Directorの本間貴裕氏に聞いた。

SANUのメンバー。左から5番目が福島弦氏、同6番目が本間貴裕氏(写真:SANU)
SANUのメンバー。左から5番目が福島弦氏、同6番目が本間貴裕氏(写真:SANU)
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SANU CABINはプレファブリケーションによる工業化住宅のようなつくり方をする建築です。部材を工場でつくって組み立てるという意味では、プロダクトデザインに近い。一方で、自然と建築という文脈では、古くからの議論として「土地固有のコンテクストを読んでプランや外観をデザインすべきだ」という考え方もあります。どう考えていますか?

本間貴裕:その観点について、僕たちは明確な指針を持っています。デザインを掘り下げて掘り切った場所にあるものは、「植生」なのではないか。その土地に根付く植物は、その土地の気候や地形、土壌などの環境を反映しています。ある時、植生こそが「その土地を表すデザインなのだ」と気付いたんです。

 一方で建築は、その土地を反映する「器」のようなものではないかと。日本には「借景」という言葉がありますが、シンプルな白い器のような建築の中に人がいて、窓を通して景色や緑が見える。窓を開ければ、匂いや音を感じ取れる。

 我々は建物を器として、その中に植生を誘い込む。その手段として、「花を摘む」という行為を大切にしています。チェックインして部屋に入ると剪定鋏(せんていばさみ)があります。花屋で花を買うのではなく、敷地内で摘んだ花を花瓶生ける。花ではなく枯れ木でもいいんです。

 インテリアは木と白を基調とした設計としました。そこに、自然から借りてきた花や木を生けることで、デザインが完成する。白い壁を背景に、ハイビスカスを置けばハワイに、松を置けば日本に、メープルを置けばカナダになりますよね。その土地から借りたもので、その土地を感じてほしい。「自然の中にお邪魔する」という感覚でしょうか。

 工業製品という表現が適切かわかりませんが、我々はデザインについて妥協しているわけでは決してありません。設計の全てを最適化してビジネスに徹しているわけでなく、なるべくシンプルに、植生の力を借りながらデザインと機能性、それから事業の展開性を結びつけています。

お話を伺っていて、自然公園の中にたたずむベンチのような存在のように感じました。ベンチもまた工業製品ですが、地形を読みながら配置することで、自然を主として従の存在でいることができますね。

本間:その表現は的を射ているかもしれません。ただベンチと違うのは、僕たちはそこに壁を立てて天井を載せる。何故かというと、「自然が好きだ」と思ってその中に行きたいと考える人を増やしたいから。屋根がない場所でもテントを張って寝れるキャンパーは、既に自然が大好きです。そういう人たちにさらに自然を好きになってもらうより、「自然の中で過ごしたいけどキャンプにいくのは骨が折れる」という人のハードルを下げたい。そのほうが社会的なインパクトが最大化されると考えるからです。

 だから僕たちの事業は、グランピングでもなければキャンプ場でもない。「キャビン=住宅」として、春夏秋冬どの季節でも快適に過ごせる場を提供したい。