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 日本建築学会は2021年4月16日、同年日本建築学会賞の各賞を発表した。「近年中、国内に竣工した建築作品であって、芸術・技術の発展に寄与する優れた作品」を選出する作品部門(以下、作品賞)においては、「島キッチン」(香川県土庄町)、「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」(徳島県上勝町)、「京都市美術館」(通称:京都市京セラ美術館、京都市)の3件が選ばれた。

豊島の空き家を改修した「島キッチン」。2021年日本建築学会賞作品賞を受賞した(写真:堀田 貞雄)
豊島の空き家を改修した「島キッチン」。2021年日本建築学会賞作品賞を受賞した(写真:堀田 貞雄)
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徳島県上勝町に完成した「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」の外観(写真:生田 将人)
徳島県上勝町に完成した「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」の外観(写真:生田 将人)
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帝冠様式の趣を残しつつ再生した「京都市美術館」(写真:生田 将人)
帝冠様式の趣を残しつつ再生した「京都市美術館」(写真:生田 将人)
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 島キッチンは、瀬戸内海の豊島に立つ空き家を改修した食事・休憩施設だ。10年に開催した第1回瀬戸内国際芸術祭に出展したアート作品の1つ。庭にあった2本の柿の木を囲むように大きな屋根を架けて半屋外の空間を創出した。受賞者は安部良アトリエ一級建築士事務所(東京・渋谷)の安部良代表だ。

 屋根は亜鉛メッキの鋼管柱と鉄筋の下地による構造で、焼スギ板をふいた簡素なつくりとしている。芸術祭のオフシーズンには地域住民やボランティアスタッフが1~2年に1度、屋根と構造体の点検・メンテナンスを行っている。

 選評では「一般的な建築という範疇(はんちゅう)に入るかどうかについて議論の余地はあるだろう」としながらも、「キッチンや屋内席のある主屋部分の改修を繰り返す過程で、作品は建築家や芸術祭から地域住民へと主体者意識が移行し、より長期的に安全性が確保されたコミュニティー活動の場として、すなわち地域の『建築』へと至った」と記された。

 上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、徳島県上勝町に完成した、ごみ分別回収所を中心とした複合施設だ。03年、上勝町はごみゼロを目指し、自治体として日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を掲げた。

 同施設の設計・建設行為においては、域外から物を持ち込まない、廃材を出さない、地域資源を活用する、という観点を徹底的に検証した。例えば、上勝町産のスギを丸太に近い状態で構造に用いたり、壁面に古い建具をパッチワーク状に取り付けて再利用したりして、ごみの発生を抑えている。受賞者はNAP建築設計事務所(東京・港)の中村拓志代表と、山田憲明構造設計事務所(東京・品川)の山田憲明代表だ。

 「中村、山田の両者がそれぞれに、自らのゼロ・ウェイストを突き詰めて発信することで、建築としての使命を全うさせている。大きな作品ではないが、設計者の挑戦と調和には時代を画する稀有(けう)なものがある」と評価された。

 京都市美術館は、1933年竣工の旧美術館の意匠を生かしながら大規模改修した建物だ。受賞者は西澤徹夫建築事務所(東京・中央)の西澤徹夫主宰、AS(東京・港)の青木淳代表。「公共施設デザインの都市に対する在り様として、美術館の体験にとどまらず、非常に巧みで優れた都市体験に拡張して見せている」「私たちの都市観にまで作用する類稀(たぐいまれ)な力作である」と評価を受けた。