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 清水建設は2021年4月16日、総合病院の建築確認において、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データと「法適合判定プログラム」を使って指定確認検査機関と事前協議をし、確認済み証を交付されたと発表した。業界で初めての事例だという。同社は検査機関の1つである一般財団法人日本建築センター(BCJ)の協力の下、事前協議の仕組みを構築。今回、両者での事前協議から本申請を経て、確認済み証を受けた。

 今回の取り組みの狙いを一言で表現すると、現行の事前協議に不可欠な紙の「申請図書」を使った確認業務の一部を、将来的に「BIMデータと法適合判定プログラム、市販ソフト、ビューワー」を使ったものに置き換えることだ。設計者が申請図書として、紙の書類ではなくBIMデータを提出し、受け取った検査機関はコンピューターで法適合を審査する。

法適合判定プログラムの実行例。適合していない箇所を、プログラムが瞬時に発見してくれる。写真は、清水建設設計本部デジタルデザインセンターの佐藤浩上席設計長(写真:日経クロステック)
法適合判定プログラムの実行例。適合していない箇所を、プログラムが瞬時に発見してくれる。写真は、清水建設設計本部デジタルデザインセンターの佐藤浩上席設計長(写真:日経クロステック)
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 法適合判定プログラムを使えば、例えばBIMデータに登録された防火区画や各種設備類などの法適合判定を簡単に実行できる。紙の申請図書では人手で1つずつ確認していくしかないので、非常に多くの時間と労力がかかる。

 事前協議は、清水建設が20年に開発した、BIMデータを使った建築確認のためのシステムにおける事前協議プロセスに沿って実施した。クラウド上でBIMデータを共有し、BCJは法適合判定プログラムや市販ソフトで法適合を確認する。訂正内容が見つかれば、清水建設に知らせて修正を求める。

 この間、事前協議はクラウド上で完結する。実質的な法適合チェックは済んでいるので、その後の本申請がスムーズになると期待できる。

新システムによる建築確認申請のフロー(資料:清水建設)
新システムによる建築確認申請のフロー(資料:清水建設)
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 ただし現行では、建築主事による申請図書(図書および書類)の確認が建築基準法で義務付けられている。そのため今回は、申請図書による事前協議も実施した。

 新システムを使った建築確認の第1弾は、清水建設が設計・施工する、埼玉県三郷市の「三愛会総合病院」の新築プロジェクトである。地上7階建てで、延べ面積は約1万7200m2、構造は鉄骨造(一部CFT造)。工期は21年3月から22年9月中旬までを予定している。

新しい三愛会総合病院の外観イメージ(資料:清水建設)
新しい三愛会総合病院の外観イメージ(資料:清水建設)
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 20年2月に設計に着手し、同年10月から新システムを使った建築確認の準備を始めた。事前協議は21年1月18日に開始し、本申請は同年2月18日から、そして確認済み証は同年3月12日に交付された。

 通常だと事前協議から交付まで、2カ月半から3カ月かかるという。今回は初めての取り組みだったが、約2カ月で確認済み証の交付に至った。少なくとも2週間ほど、従来よりも期間を短縮できたことになる。

設計から事前協議、本申請、確認済み証の交付までの流れ(資料:清水建設)
設計から事前協議、本申請、確認済み証の交付までの流れ(資料:清水建設)
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 清水建設は新システムを実案件に初めて適用するに当たり、BCJと改めて建築確認の審査手順や審査に必要なデータなどを話し合った。その結果、病院建築の法適合判定に必要なプログラムを13種類、審査に必要な情報のビューテンプレート(ビューワー)を32種類、それぞれ整備することにした。

病院建築の法適合判定に必要なプログラムを13種類、審査に必要な情報のビューワーを32種類用意した。総合病院は、法適合のチェック項目が非常に多い建築物の1つだ(資料:清水建設)
病院建築の法適合判定に必要なプログラムを13種類、審査に必要な情報のビューワーを32種類用意した。総合病院は、法適合のチェック項目が非常に多い建築物の1つだ(資料:清水建設)
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 両者は19年6月から試行の準備を開始しており、20年3月にシステムがいったん完成。その時点で開発済みだったプログラムに加えて、今回の実案件で新たに必要と判断したものをそろえて事前協議を実施している。

 併せて、BIMデータの構造計算や面積算定に使う市販ソフトも、ツールベンダーに協力を依頼して事前協議に必要な機能を追加してもらった。構造計算は構造システム(東京・文京)の「BUS-6 +Revit Op.」、面積算定は生活産業研究所(東京・目黒)の「求積ツール for Revit」(ベータ版)を用いた。

 事前協議に際して清水建設は、米オートデスクのBIMソフト「Revit」で設計するのに必要な「ファミリ」(パーツ=部材の形状情報と属性情報)に従って、建築基準法関連の情報を登録したBIMデータを作成した。それをクラウド(オートデスクのBIM 360)で、BCJと共有。両者は、開発した法適合判定プログラムと機能追加した市販ソフトを使って、BIMデータだけで事前協議を済ませた。

「空調ダクト区画貫通部の処理状況」の法適合判定プログラムについて、佐藤上席設計長が説明しているところ。総合病院の空調設備は複雑で法適合の判定作業が大変(写真:日経クロステック)
「空調ダクト区画貫通部の処理状況」の法適合判定プログラムについて、佐藤上席設計長が説明しているところ。総合病院の空調設備は複雑で法適合の判定作業が大変(写真:日経クロステック)
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BIMモデルに配置した「非常照明設備」と「避雷設備」の法適合判定(資料:清水建設)
BIMモデルに配置した「非常照明設備」と「避雷設備」の法適合判定(資料:清水建設)
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