全1503文字
PR

 月や砂漠の砂を固めて建設材料に──。そんな技術開発に取り組むのは、東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授だ。セメントや樹脂などの接着成分を使わず、触媒を用いて砂同士を接着する。このほど、直径と高さが2.5cmほどの硬化体の製造に成功した。

 原料は砂とアルコールと触媒。これらを密閉容器に入れて加熱・冷却し、砂の化学結合を切断・再生することで、硬化体を製造する。加熱温度は240度程度で、1000度以上が必要な溶融などに比べて低い。二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする材料であれば硬化が可能で、砂漠の砂や廃ガラスでも製造できる。「二酸化ケイ素は地球にある多くの砂や砂利の主成分であり、あらゆる場所で調達できる。枯渇の心配がない」(酒井准教授)

砂同士を接着した硬化体を持つ東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授(写真:日経クロステック)
砂同士を接着した硬化体を持つ東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 砂の粒子を固めるメカニズムは、次のような化学式で表される。

 SiO2+4ROH⇔Si(OR)4+2H2O ※RはC2H5

 二酸化ケイ素(SiO2)とアルコール(ROH)を反応させると、テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)と水(H2O)が生成される。この反応は平衡状態となるため、二酸化ケイ素(固体)とテトラアルコキシシラン(液体)はどちらも存在する。この際、テトラアルコキシシランは水と反応してゲル状の物質になり、二酸化ケイ素の粒子と粒子の間に入って接着剤のような働きをする。さらに、生成した硬化体を加熱して脱水すると、テトラアルコキシシランが二酸化ケイ素に戻り、接着強度が増して硬化体の強度が高まるという。

 酒井准教授は、ケイ砂を主成分とする砂の他に、砂漠の砂や月の砂と同じ成分構成の模擬砂などの硬化体を製造した。砂漠の砂は粒度が細かく均一なため、コンクリートの骨材としては使えないといわれている。そんな砂でも利用可能な点が特徴だ。

 月の模擬砂については、舗装資材メーカーのニチレキから提供を受けた。この模擬砂は、二酸化ケイ素の割合が44%程度と、一般的な砂に比べて少ない。それでも硬化体を製造できた。

ケイ砂から製造した硬化体(左の2つ)と原料のケイ砂。通常の方法で製造した硬化体(中央)に加えて、加熱して強度を高めた硬化体(左)を製造した(写真:日経クロステック)
ケイ砂から製造した硬化体(左の2つ)と原料のケイ砂。通常の方法で製造した硬化体(中央)に加えて、加熱して強度を高めた硬化体(左)を製造した(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
砂漠の砂から製造した硬化体と原料のナミブ砂漠(ナミビア)の砂(写真:日経クロステック)
砂漠の砂から製造した硬化体と原料のナミブ砂漠(ナミビア)の砂(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
月の模擬砂から製造した硬化体と原料の月の模擬砂。模擬砂はニチレキから提供された(写真:日経クロステック)
月の模擬砂から製造した硬化体と原料の月の模擬砂。模擬砂はニチレキから提供された(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
二酸化ケイ素を主成分とするガラスビースとアルコール、触媒を加熱して製造した硬化体を顕微鏡で見る。左の写真では粒子と粒子を接着している状況がわかる。右の写真は、粒子の隙間に接着成分が入り込んで一体化した状態(写真:東京大学酒井雄也研究室)
[画像のクリックで拡大表示]
二酸化ケイ素を主成分とするガラスビースとアルコール、触媒を加熱して製造した硬化体を顕微鏡で見る。左の写真では粒子と粒子を接着している状況がわかる。右の写真は、粒子の隙間に接着成分が入り込んで一体化した状態(写真:東京大学酒井雄也研究室)
[画像のクリックで拡大表示]
二酸化ケイ素を主成分とするガラスビースとアルコール、触媒を加熱して製造した硬化体を顕微鏡で見る。左の写真では粒子と粒子を接着している状況がわかる。右の写真は、粒子の隙間に接着成分が入り込んで一体化した状態(写真:東京大学酒井雄也研究室)