全1645文字
PR

 JR徳島駅から500mほどの距離にある徳島市新町西地区。市の政策変更で事業中止に追い込まれた同地区での市街地再開発事業を巡り、地権者でつくる新町西地区市街地再開発組合(以下、組合)が市に損害賠償を求めた訴訟は2021年4月8日、高松高等裁判所で和解が成立した。市は4月28日、組合に対して和解金4億1000万円を支払った。

徳島市新町西地区の商店街の様子。2020年6月撮影。平日の昼間からシャッターが下りた店が多い(写真:新町西地区市街地再開発組合)
徳島市新町西地区の商店街の様子。2020年6月撮影。平日の昼間からシャッターが下りた店が多い(写真:新町西地区市街地再開発組合)
[画像のクリックで拡大表示]
商店街の周辺では老朽化した建物が目立つ。2020年6月撮影(写真:新町西地区市街地再開発組合)
商店街の周辺では老朽化した建物が目立つ。2020年6月撮影(写真:新町西地区市街地再開発組合)
[画像のクリックで拡大表示]

 和解条項には、市が施策変更に対する対応が適切でなかったことを認めて組合に対して和解金を支払うことの他、市と組合が今後の街づくりに互いに協力することが盛り込まれている。和解理由について内藤佐和子市長は記者会見で「新町西地区は今後の中心市街地の活性化のために必要不可欠なエリアだ。地域住民や関係者と一緒に街づくりをできる関係性を構築したい」と説明した。

 組合の高木俊治理事長は日経クロステックの取材に対して、「人通りが少なく、活気がない状況を1日でも早く何とかしたいという思いがあった。和解条項で街づくりを進めていくことが明文化されたことは大きな前進だ」と説明する。今後は、組合を存続させるかどうかを組合員で協議する。存続することになれば、市と組合で地区の再開発方針などの検討を進める考えだ。

 焦点となった再開発事業の総事業費は約225億円で、文化活動などに用いる新ホールの建設が事業の中核だった。組合と原秀樹・元市長との協議では、新ホールの完成後に市が施設を買い取る方針で合意していた。

 しかし、16年の市長選で再開発事業の白紙撤回を公約に掲げて出馬した遠藤彰良氏が当選。遠藤前市長は4月の就任直後、「ホールは購入せずに、補助金を支出しないことで、市は再開発事業から撤退する」などと方針転換を表明し、組合が16年4月に申請した権利変換計画も不認可処分とした。

 自己資金を保有していなかった組合は、市からの補助金と特定業務代行者の竹中工務店からの借入金によって事業費を賄っていた。竹中工務店からの借入金は新ホールを市に売却する代金で返済する計画だったが、市の政策変更によって事業が頓挫したため、組合は竹中工務店への借入金を返済できない状態に陥った。18年時点で組合が抱えていた借入金および利息は約5億5000万円に上る。