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 1964年東京五輪のシンボルである国立代々木競技場(東京・渋谷)が、国の重要文化財となる見通しだ。文化審議会は2021年5月21日、代々木競技場を含む7件の建造物を指定するよう文部科学大臣に答申した。今後、答申通りに指定されれば、建造物の国宝・重要文化財は合計2530件、5253棟となる。

戦後モダニズム建築の傑作といわれる国立代々木競技場(写真:日本スポーツ振興センター)
戦後モダニズム建築の傑作といわれる国立代々木競技場(写真:日本スポーツ振興センター)
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 代々木競技場が建設されたのは1964年。重要文化財には第一体育館と第二体育館の2棟が指定される。第一体育館は水泳、第二体育館はバスケットボールの競技施設としてつくられた。完成当時の建築設計は丹下健三(1913~2005年)、構造設計は坪井善勝(1907~90年)が手掛けた。無柱の大空間とシンボリックなつり屋根構造、上空から見たときに半円がずれたような巴形(ともえがた)の平面構成は比類ない美しさといえる。

第一体育館北側の外観。つり屋根構造でシンボリックな外観を実現している(写真:日本スポーツ振興センター)
第一体育館北側の外観。つり屋根構造でシンボリックな外観を実現している(写真:日本スポーツ振興センター)
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第一体育館のアリーナ。中央が伸び上がったような壮大な内部空間を持つ(写真:日本スポーツ振興センター)
第一体育館のアリーナ。中央が伸び上がったような壮大な内部空間を持つ(写真:日本スポーツ振興センター)
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 文化庁の発表では、代々木競技場を「戦後建築の金字塔」と評した。「当時一流の技術者を結集し、前例のない技法、構法を開発、駆使し、意匠、構造、機能を極めて高い水準で融合させて空前のダイナミックな建築を実現した。意匠的にも技術的にも秀でた、戦後モダニズム建築として価値が高い」と説明し、重要文化財の指定基準における「意匠的に優秀なもの」「技術的に優秀なもの」の2つに該当するとした。

第二体育館の外観(写真:日本スポーツ振興センター)
第二体育館の外観(写真:日本スポーツ振興センター)
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第二体育館のアリーナ、可動席を設置したときの内部空間(写真:日本スポーツ振興センター)
第二体育館のアリーナ、可動席を設置したときの内部空間(写真:日本スポーツ振興センター)
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 かつて坪井善勝研究室に所属していた構造設計者の斎藤公男氏は、2019年6月に行った日経クロステックのインタビュー取材で設計当時を次のように述懐している。「冬の寒い早朝、赤坂離宮に学生たちが招集されて、代々木競技場設計に向けた集会が行われた。丹下健三さんや高山英華さんなど、そうそうたるメンバーが集まり、戦後の日本で世界に負けないものをつくろうと志を共有した」