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 2021年5月21日、米国ニューヨークの中心地マンハッタンにある「ハドソン・リバー・パーク」で、水上都市公園「リトルアイランド」の供用が始まった。公園は陸地からハドソン川に延びる2本のガングプランク(橋状のタラップ)でアクセスする人工地盤上にある。

 「リトルアイランド」のプロジェクトリーダーは、英国ロンドンを拠点とする設計事務所Heatherwick Studio(ヘザウィックスタジオ)だ。トーマス・ヘザウィック氏が主宰する。初期構想から家具のディテールなどまでデザイン全般を手掛けた。構造や工法、設備設計などはアラップ、ランドスケープデザインを米ニューヨークのランドスケープ設計事務所MNLAが担当した。

 ハドソン・リバー・パークはニューヨーク州の通称ハドソン・リバー・パーク法(1998年)に基づき整備が進む公共公園で、2つの公益法人が公園、河口域の保護区の管理や教育プログラムの製作などを行なっている。

マンハッタン西側の遊歩道ハドソン・リバー・グリーンウェイ越しに見た「リトルアイランド」。ハドソン川には台風で大破したピア54の木杭が残され、現在は漁礁になっている。左手に突端が見えるガンズヴォート・ペニンシュラも22年に緑地公園としてオープンする予定だ。造園デザインはジェームズ・コーナー・フィールド・オペレーションが担う(写真:Timothy Schenck)
マンハッタン西側の遊歩道ハドソン・リバー・グリーンウェイ越しに見た「リトルアイランド」。ハドソン川には台風で大破したピア54の木杭が残され、現在は漁礁になっている。左手に突端が見えるガンズヴォート・ペニンシュラも22年に緑地公園としてオープンする予定だ。造園デザインはジェームズ・コーナー・フィールド・オペレーションが担う(写真:Timothy Schenck)
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 「リトルアイランド」は入園無料。開園時間は毎日早朝午前6時から深夜午前1時まで。午後0時から午後8時の間は入園予約が必要となる。園内のフードとドリンクの販売時間は毎日午前7時から午後11時まで。また、2021年6月からは、園内で上演するパフォーミングアーツの作品製作を視野に入れた、4人のアーティスト・イン・レジデンス(滞在して製作する招聘作家)を含む、ニューヨーク在住のアーティストの育成・支援プログラムもスタートする。

対岸から見た「リトルアイランド」の中央広場「ザ・プレイ・グラウンド」。レクリエーションや教育プログラムのためのオープンプラザで、座席とテーブルが並び、ニューヨークのサヴォリー・ホスピタリティ社が3つの屋台を運営する(写真:Timothy Schenck)
対岸から見た「リトルアイランド」の中央広場「ザ・プレイ・グラウンド」。レクリエーションや教育プログラムのためのオープンプラザで、座席とテーブルが並び、ニューヨークのサヴォリー・ホスピタリティ社が3つの屋台を運営する(写真:Timothy Schenck)
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 公園の面積は約9712m2(ほぼ東京ドーム2つ分)。園内には540m以上の遊歩道が、ビューポイントや屋外劇場などをループ状に巡る。この他、ハドソン川を背景に木製のベンチが舞台を囲む約700人収容の屋外アンフィシアター、スポークンワード(朗読・言葉のパフォーマンス)のための200人規模のステージなど、パフォーミングアーツのための屋外劇場が計3つある。

高低差のある地形を生かしハドソン川に面して設けた約700席の屋外アンフィシアター。ニューヨーク・シティ・バレエの作品上演などを予定している(写真:Timothy Schenck)
高低差のある地形を生かしハドソン川に面して設けた約700席の屋外アンフィシアター。ニューヨーク・シティ・バレエの作品上演などを予定している(写真:Timothy Schenck)
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 「リトルアイランド」の人工地盤は、水深約60mの岩盤を支持層とする267本のコンクリート杭が支えている。上部にはチューリップの花冠のような形をした計132個のプレキャストコンクリート製「ポット」(直径約6m)を搭載して現場打ちコンクリートのスラブで固定した。

「リトルアイランド」の地形断面図(資料:Heatherwick Studio)
「リトルアイランド」の地形断面図(資料:Heatherwick Studio)
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 杭の耐荷重は約250~350トン。ポットを並べた平面形状は五角形のタイルパターン(カイロ・ペンタゴナル・タイリング)を描く。

 プレキャストコンクリートで製造する部材は、アラップが3Dで配筋モデルを作成し、複雑な形状のパーツをデジタルファブリケーションで製作することを計画。ポットのパーツは39種類の型枠を使ってニューヨーク州北部で製造し、アルバニー港でポット形に組み上げ、バージ船(はしけ船)でハドソン川を下り現場に運んだ。ポット上には土を載せ、水辺の気候に適した地元の植物を100種類以上植えている。

 コンクリート杭の高さに変化を与えることで、起伏のある人工地盤を実現。生態系への影響を配慮し、水際は奥の川面まで日光が届くようクリアランスを調整した。

川面に覗くピア54の木杭。その木杭に着想を得て、露出した杭をデザインエレメントとして見せる「リトルアイランド」のコンセプトが導き出された。魚の生息地を保護するため太陽光が人工地盤下まで届くよう杭の高さを計画している(写真:Timothy Schenck)
川面に覗くピア54の木杭。その木杭に着想を得て、露出した杭をデザインエレメントとして見せる「リトルアイランド」のコンセプトが導き出された。魚の生息地を保護するため太陽光が人工地盤下まで届くよう杭の高さを計画している(写真:Timothy Schenck)
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ポットのディテール断面。それぞれのポットは現場打ちコンクリートのスラブで連結固定している(資料:Heatherwick Studio)
ポットのディテール断面。それぞれのポットは現場打ちコンクリートのスラブで連結固定している(資料:Heatherwick Studio)
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