パナソニックの連結子会社であるパナソニック環境エンジニアリングで2020年11月に発覚した、施工管理技士資格などの不正取得問題。同社が21年5月14日に公表した第三者委員会(委員長:丸の内総合法律事務所の川俣尚高弁護士)の調査報告書は、過去の不正発覚時の「隠蔽」によって問題解決の機会を逃したと断じた。
第三者委員会の調査報告書や国土交通省によると、同社では元社員を含む57人が延べ85資格について実務経験の要件を満たさず技術検定試験を受検していた。要件を満たさずに取得した資格は、1級電気工事施工管理技士や1級建築施工管理技士などだ。また、元社員を含む25人が実務経験の要件を満たさず監理技術者資格者証の交付を申請し、取得していた。
受検・申請に当たって、実務経験証明書に虚偽の工事経歴を記載して不正に資格を取得したケースと、実務経験の要件に不備があることを認識せず、結果的に不正に取得したケースがあった。特に、01~06年度に問題が多く発生していた。これまでに、不正に資格を取得した社員を主任技術者や監理技術者として配置した工事は346件に上る。
第三者委員会は、実務経験の年数が社員によって異なるにもかかわらず、同社の人事部門が「社歴イコール実務経験」という誤った考えに基づき、社歴に応じて資格取得を推奨していたと指摘。資格取得を昇格の条件とした社内制度も相まって、不正取得が生じたなどと結論付けた。
同社では、1990年代後半ごろから2000年代前半ごろまで、工事の受注増加に伴い技術者が不足していたことも、不適切な資格取得推奨につながった。
このほか第三者委員会は、実務経験証明書が適正かどうかを確認する立場にあった支店長や営業所長が、社員に資格取得を推奨する役割を担うなど、チェック機能が働きづらい社内体制になっていた点についても指摘した。
また、社員が不正取得を正当化したり、不正取得を勧めたりするなど、規範意識が低い点についても言及した。不正に資格を取得した社員は、第三者委員会のヒアリングに対して、「当社だけでなく競合他社でも、(実務経験証明書の内容を)多少誇張して記入することが常識的だったため、浅はかにも真に受けてしまった」「(実務経験証明書の記入に当たって)上司から提供された工事の件名は、自分が全く関与したことがないものだった」などと回答している。