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 ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を中心とする投資家から約30億ドル(約3300億円)もの資金を調達し、建設テック企業の代表格として注目されてきた新興建設会社の米Katerra(カテラ)が2021年6月初旬に経営破綻した。「プロセスとテクノロジーの革新による建設業の変革」を掲げた同社は、なぜ設立から6年で力尽きたのか。

カテラがワシントン州スポケーンバレーに建設したCLT(直交集成板)工場のオープニングイベントの様子。中央の背の高い人物はワシントン州のジェイ・インスレー知事。その右の人物がカテラのマイケル・マークスCEO(当時)(写真:Katerra)
カテラがワシントン州スポケーンバレーに建設したCLT(直交集成板)工場のオープニングイベントの様子。中央の背の高い人物はワシントン州のジェイ・インスレー知事。その右の人物がカテラのマイケル・マークスCEO(当時)(写真:Katerra)
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 米国内を中心に集合住宅や商業施設などを建設してきたカテラは21年6月6日、米連邦破産裁判所に米連邦破産法11条の適用を申請したと発表した。米連邦破産法11条は「チャプターイレブン」と呼ばれ、日本の民事再生法に相当する。

 新型コロナウイルス感染拡大や、同社に融資していた金融サービス会社の英グリーンシル・キャピタルが21年3月に経営破綻した影響、資金調達の難航などで財政状態が急激に悪化したという。なお、SVFはグリーンシルにも巨額の投資をしていた。

 裁判所への提出書類によると、カテラの従業員は9カ国に約6400人。20年の収益は約17億5000万ドル(約1900億円)だった。負債総額は推定10億~100億ドル(約1100億~1兆1000億円)だ。

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は21年6月23日に開催した同社の株主総会でSVFの実績を強調しつつ、「反省すべき点もある。(経営危機に陥った)米WeWork(ウィーワーク)やカテラ、グリーンシルなど、名前を思い出すだけで恥ずかしくなるような、赤面する状況だ」と語った。

 カテラは再建に向けて、米国事業の統合、リノベーション事業や傘下企業の売却などを進める。国外事業は再建に向けた手続きの影響を受けないという。同社は手続き中の運転資金として、SVFの運営会社から約3500万ドル(約38億円)を確保したと発表している。

 21年6月1日にカテラの破綻が報じられると、日本の建設会社や、建設テックを手がけるスタートアップ企業などの関係者からも驚きの声が上がった。同社は世間から、建設テック分野を象徴するスタートアップ企業とみなされてきたからだ。以降では、カテラの発表資料や同社が裁判所に提出した書類などを基に、その歩みと破綻の背景を読み解こう。

設計事務所や建設会社などを次々に買収

 カテラは15年、マイケル・マークス氏、ジム・デビッドソン氏、フリッツ・ウォルフ氏の3人が共同で設立した。3人は投資会社などの出身者で、いずれも建設会社の経営に明るいとはいえない人物だ。

 同社が掲げたのは、企画・設計、構造部材や住宅設備の生産、現場での施工までをワンストップで提供する垂直統合モデルだった。建築物の構成要素をモジュール化して工場生産を推し進め、天候などに左右されやすい建設現場での作業を減らす。さらに、データに基づく建築生産プロセスの管理によって無駄なコストを省き、工期短縮や品質向上などを図る。そんなプランを描いていたようだ。

 建築生産の工業化というアプローチは数十年前から存在するが、単品受注生産が基本の建築分野にあって、主流になることはなかった。この「永遠のテーマ」の実現に向けて、カテラは国内外の設計事務所や建設会社など20社以上を次々に買収していった。

 カテラが買収した米国の建設会社はUEB Builders(UEBビルダーズ)やFields Construction(フィールドコンストラクション)など。建築設計事務所には、木造建築で有名なカナダのMichael Green Architecture(マイケル・グリーン・アーキテクチャー)や、経営破綻に伴い売却予定の米Lord Aeck Sargent(ロード・エーク・サージェント)がある。