全1819文字
PR

 崖の上に立つ住宅が、次々に崩落していく――。2021年6月25日、大阪市西成区天下茶屋東2丁目の住宅地で空石積み擁壁が崩壊し、2棟(計4戸)の住宅が崖下に崩落する事故があった。当日に在宅していた3人は、事前に避難して無事だった。

連棟住宅が崩落する様子。近隣住民が6月25日に崖下で撮影した。その約3時間後、左側(北側)の住宅も崩落した(動画:住民提供)

 事故があったのは、南北に細長い崖沿いの土地に、複数の住宅が連なって立つエリア。最初に崩落したのは、この土地の南から2番目に立つ、2戸がつながった連棟住宅だった。住人が異常を察知したのは25日午前6時ごろ。住人は読売テレビの取材に対して「ジャリジャリ、ミシミシという異音が聞こえてきて、風呂場を見たら床が剥がれていた。玄関扉が開かないことに気付き、慌てて金づちで扉を壊して母親と一緒に外に逃げた」と証言している。

 その後、近隣住民が「(最初に崩落した)住宅の敷地と道路の境界付近から水が漏れている」と警察に通報。警察官が現場に駆け付けて、避難を呼び掛けていた午前7時40分ごろのことだ。高さ約9mの擁壁が崩れ始め、2戸の連棟住宅は西側の崖下に地響きをたてながら転落した。それから約3時間後の午前10時34分には、北隣に立っていた別の連棟住宅(2戸)もこらえ切れなくなり、擁壁もろとも崩れ落ちた。

 崖下の敷地では、6階建てサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の建設に向けて、掘削工事が行われていた。工事は事業主であるT.R.D.(大阪市)が大畑組(大阪府富田林市)に発注して21年2月に始まった。警察は崩落事故と工事の関連を調べている。

崩落事故現場の様子。崖下がサービス付き高齢者向け住宅の建設現場。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
崩落事故現場の様子。崖下がサービス付き高齢者向け住宅の建設現場。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
崖上からサービス付き高齢者向け住宅の建設現場を見下ろす。地盤には鋼管杭が施工されていた。写真左側の保育所は休園し、崖の新たな崩落による被害を防ぐために防護用の囲いを施していた。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
崖上からサービス付き高齢者向け住宅の建設現場を見下ろす。地盤には鋼管杭が施工されていた。写真左側の保育所は休園し、崖の新たな崩落による被害を防ぐために防護用の囲いを施していた。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 最初に崩落した住宅の南隣にある3階建ての戸建て住宅はなんとか崩落を免れたものの、基礎下の地盤と擁壁の大部分が崩落した危険な状態だ。この崖下には保育所があり、園児らに危険が及ぶとして臨時休園している。

 こうしたなか、大阪市の松井一郎市長は6月29日の会見で「3階建ての住宅は市が解体撤去する」と発表。「住人と事業者との間で解体撤去に関する話し合いがつくことを願っていたが、そうはならなかった。保育所や近隣住民の不安をすみやかに解消することと道路への影響を考えて決断した」などと説明した。

  さらに松井市長は7月1日の会見で、「大林組と緊急で仮契約を結び、7月6日に解体撤去を実施する予定だ」と明らかにした。崖下にウインチを設置し、ワイヤで引き倒す。併せて、前面道路側から油圧ショベルで押す計画だ。市は、解体撤去費用をいったん肩代わりし、崩落原因の調査結果を踏まえて、原因をつくった者に請求するとしている。

基礎下の地盤と擁壁が崩落した状態で倒壊を免れた戸建て住宅。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
基礎下の地盤と擁壁が崩落した状態で倒壊を免れた戸建て住宅。6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
崩落を免れた3階建て住宅は、ウインチを設置してワイヤで引き倒す計画だ(資料:大阪市)
崩落を免れた3階建て住宅は、ウインチを設置してワイヤで引き倒す計画だ(資料:大阪市)
[画像のクリックで拡大表示]