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 米フロリダ州マイアミ近郊のサーフサイドで現地時間の2021年6月24日に発生した12階建て高層集合住宅の崩落事故。7月3日時点で死者は24人に増え、121人の安否が確認されていない。崩落の瞬間を捉えた映像を分析した専門家は、「建物の下部を起点とした進行性崩壊ではないか」と指摘する。

崩落したシャンプレイン・タワーズ・サウスで進む救助活動とがれきの撤去(写真:Miami-Dade Fire Rescue)
崩落したシャンプレイン・タワーズ・サウスで進む救助活動とがれきの撤去(写真:Miami-Dade Fire Rescue)
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 崩落したのは海沿いに立つ136戸の集合住宅、シャンプレイン・タワーズ・サウス。1981年に完成した鉄筋コンクリート(RC)造の建物だ。敷地内にはプールがあり、地下は駐車場となっていた。事故では建物の北東側の55戸が崩落したとみられている。残った部分はハリケーンの襲来に備えて2021年7月4日に爆破解体された。

 建物の付近からカメラが捉えた映像は、最初に集合住宅の中央部分が崩れ落ち、続いて残された東側が崩落する様子を映し出している。いずれの箇所も、崩れ始めてから一気に全体が崩壊しているのが特徴だ。

崩落するシャンプレイン・タワーズ・サウスを、カメラが南東から捉えていた(動画:Andy Slater)
シャンプレイン・タワーズ・サウスの2~8階平面図。柱の間隔は20フィート(約6m)前後だ。水色に塗った箇所が、崩落した部分。図の上が北で、右側(東側)には海岸が広がっている(資料:Town of Surfsideの資料に日経クロステックが加筆)
シャンプレイン・タワーズ・サウスの2~8階平面図。柱の間隔は20フィート(約6m)前後だ。水色に塗った箇所が、崩落した部分。図の上が北で、右側(東側)には海岸が広がっている(資料:Town of Surfsideの資料に日経クロステックが加筆)
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 建築物の崩壊過程に関する研究で知られる筑波大学の磯部大吾郎教授は次のように分析する。「映像を見る限り、建物の下の方の構造要素が何らかの原因で壊れ、それをきっかけとして全体が崩れたような印象だ。01年の同時多発テロで崩壊した米国の世界貿易センター(WTC)の場合、最初に上層階が壊れ、その衝撃がきっかけで建物全体が崩れたが、今回はその逆だと考えられる」

 構造物の一部の構造要素が壊れることで、そのダメージがほかの部分に波及していく崩壊現象を進行性崩壊と呼ぶ。例えば、構造物の全体的な強度に大きく寄与している「キーエレメント」と呼ぶ柱が1本でも破壊されてしまうと、ほかの柱も次々に崩壊してしまうことがある。「今回の事故も、建物の下の方の構造要素が壊れたことによる進行性崩壊と言えるのではないか」(磯部教授)

 中央部分に続いて崩落した東側の部分について磯部教授は、「最初の崩落でかなりの衝撃が発生しただろう。その影響が大きいのではないか。大きな振動が崩壊のきっかけになることはある。また、最初に崩落した部分とつながっている箇所を通じて、引きずり倒されたとも考えられる」と語る。

崩落したシャンプレイン・タワーズ・サウス。床スラブなどが折り重なっている。フロリダ州は地震が少なく、マイアミ・デイド郡はハリケーンの常襲地帯であることから、地震ではなく風荷重に耐えるよう設計していたとみられる(写真:Miami-Dade Fire Rescue)
崩落したシャンプレイン・タワーズ・サウス。床スラブなどが折り重なっている。フロリダ州は地震が少なく、マイアミ・デイド郡はハリケーンの常襲地帯であることから、地震ではなく風荷重に耐えるよう設計していたとみられる(写真:Miami-Dade Fire Rescue)
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