全2651文字
PR

 築15年の超高層マンションが解体されることが分かった。東洋ゴム工業(現・TOYO TIRE)がデータを偽装した免震ゴムを使用していた物件だ。交換ではなく解体という異例の対応。急な決定に住人は困惑する。日経クロステックの取材で、事件発覚後は免震ゴムを交換する方向で設計が進んでいたことが判明した。異例のタワマン解体劇を詳報する。

 「唐突な知らせで、到底、納得できない。説明会も開かれないなんておかしいでしょう。詳しい経緯が知りたい」

 こう憤るのは、福岡市中央区にある超高層マンション「カスタリア大濠ベイタワー」の住戸を賃借する住人だ。2021年7月2日付でいきなりマンションの解体を通知され、22年6月末までの退去を求められている。

 同物件は06年に竣工した30階建て、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションで、延べ面積は1万6111.07m2。市中心部に位置し、北側には港が隣接する立地で、賃貸可能戸数は215戸だ。

福岡市中央区に位置する超高層マンション「カスタリア大濠ベイタワー」。築15年だが、解体に伴う退去の案内が住人に届いた(写真:日経クロステック)
福岡市中央区に位置する超高層マンション「カスタリア大濠ベイタワー」。築15年だが、解体に伴う退去の案内が住人に届いた(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 解体が決まった背景には、15年の東洋ゴム工業による免震ゴムのデータ改ざん問題がある。同社は免震部材の製品出荷時に検査データを改ざんしたり、不正な申請書を基に大臣認定を取得したりしていた。一連の問題で社長などが引責辞任する事態に発展した。

 問題の免震ゴムが、当該マンションでも使用されていた。ある住人が管理会社のミヨシアセットマネジメント(福岡市)から受け取った通知には、「(免震ゴムの)是正対応につき、関係各所と協議、相談を重ねた結果、最終的には解体せざるを得ないという結論に至った」などと記されていた。賃料の6カ月相当額を移転補償費として支払うとしている。

 同マンションは大和ハウスリート投資法人が13年に29億1000万円で不動産信託受益権を取得して運用してきたREIT(リート)物件で、分譲ではなく全戸が賃貸だ。資産運用は、同社から委託を受けた大和ハウス・アセットマネジメントが担ってきた。

当該マンションはリート物件で、全戸が賃貸によって運用されている。2021年6月30日、大和ハウスリート投資法人が国内の事業会社に不動産信託受益権を譲渡すると発表した(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
当該マンションはリート物件で、全戸が賃貸によって運用されている。2021年6月30日、大和ハウスリート投資法人が国内の事業会社に不動産信託受益権を譲渡すると発表した(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 両社は21年6月30日、同マンションの不動産信託受益権を37億4000万円で譲渡すると発表済み。直近の稼働率が約42%まで低下しており、「今後の収益力の維持、向上が難しいこと」などを譲渡の理由として挙げた。

 譲渡先は非公表で、「国内の事業会社」としている。売買契約締結予定日は7月2日で、住人への退去通知が同日付だったことから、解体は譲渡先の決定である可能性が高い。譲渡日は9月30日の予定だ。解体後の計画は明らかになっていないが、不動産運用に詳しいある専門家は「乏しい収益力のまま運用するより、建て替えなどを念頭に解体を選んだのではないか」と推測する。