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 住宅の地盤調査や地盤改良工事などを手掛けるハイスピードコーポレーション(松山市)は2021年8月25日、同社の元社員が地盤調査報告書のデータを改ざんしていたと発表した。当初は不正の件数を33件と発表していたが、9月6日には判明分だけで76件と修正した。不正発覚後に退職した元社員は改ざんの理由について「作業を省略したかった」と述べたという。

ハイスピードコーポレーションが2021年8月25日に同社のウェブサイトに掲載した、不正行為に関する説明文の一部(資料:ハイスピードコーポレーション)
ハイスピードコーポレーションが2021年8月25日に同社のウェブサイトに掲載した、不正行為に関する説明文の一部(資料:ハイスピードコーポレーション)
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 ハイスピードコーポレーションによると、76件の内訳は愛媛県が65件、高知県が10件、香川県が1件。社内調査では、20年4月に入社した当時20歳の元社員が20年4月1日~21年5月8日に作成した202件の調査報告書のうち76件で不正が発覚した。元社員以外が作成した地盤調査報告書については、不正を確認できなかったと説明している。

 同社が改ざんに気付いたのは、21年4月21日付の地盤調査報告書を確認しているときのことだ。元社員の上司が、報告書と柱状図で邸名に食い違いがあることを発見した。上司が理由を聞いたところ、元社員は過去のスクリューウエート貫入試験(旧称はスウェーデン式サウンディング試験、略称はSWS試験)で、本来は5地点で実施すべき貫入試験を、一部もしくは全部怠ったと告白した。

 改ざんの手口は単純だ。地盤調査報告書作成ソフトにSWS試験機で計測したデータを読み込ませる際に、ソフトの修正機能を用い、データの不足箇所に同じ現場の別の地点のデータや隣接地のデータなどを付け足していた。こうした修正機能は、多くの報告書作成ソフトが有しており、不正は比較的容易だ。一方、不正を目視でチェックするのは簡単ではない。ハイスピードコーポレーションの総務担当者は、「本物に似たデータを流用していたので、柱状図を見るだけでは見抜きにくかった」と釈明する。

 同社は21年4月26日から、地盤調査を発注していた工務店などに、不正内容や再発防止策を報告して謝罪。当初発表していた33件については、データがない箇所のSWS試験を自社で実施し、5月下旬に報告書のつくり直しを終えた。21件の現場ではすでに工事が始まっていたため、貫入位置をずらして測定した。2件の現場では、再試験の結果を踏まえて改良工事の内容を見直した。

 この33件の現場には、住宅会社の希望に応じて様々な会社が地盤保証を付けていた。ハイスピードコーポレーションによると、いずれの会社も保証の継続を承認している。14件の現場に地盤保証を付けていたハウスワランティ(東京・墨田)の森田靖英代表理事は、「会社ぐるみの不正ではないと判断した。やり直したSWS試験の解析結果から、既存の基礎と改良工事の内容で保証を継続してもいいと判断した」と話す。

 一方、愛媛・高知・香川の3県は、特定行政庁としてハイスピードコーポレーションへの調査を開始した。同社が関係している住宅について、建築基準法に違反していないか、ほかにも不正がないかなどを報告するよう求めている。愛媛県は、調査された地盤で住宅を設計した建築士にも建基法への適合性を確認する責任があるとして、建築士にハイスピードコーポレーションが調査した報告書の確認と提出を求める方針だ。