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 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、コロナ禍で1年延期になった「2020年ドバイ国際博覧会」(ドバイ万博)が2021年10月1日に開幕した。中東およびアフリカ地域では、登録博として初開催となる国際博覧会だ。会期は22年3月31日までの半年間。

 日本館は「Where ideas meet アイディアの出会い」のテーマを掲げた。多様な出会いから新しいアイデアが生まれ、未来がより良い方向に変わることを最新の映像表現や空間演出で提示する。そのうえで、25年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)につなげたい考えだ。

ドバイ万博「日本館」(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
ドバイ万博「日本館」(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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21年10月1日に開催した開館式(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
21年10月1日に開催した開館式(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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万博会場での日本館の位置(資料:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
万博会場での日本館の位置(資料:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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 日本館は水と風を建築のコンセプトにしている。建物を覆う「白い膜」のようなファサードと、建物前方に設けた三角形の水盤が目を引く。風で揺らぐ白いファサードが水盤に映り込む。万博会場内には見た目が派手な建物も多いが、そんな中で白一色の日本館は小ぶりながら異彩を放っている。館内は、ミストが漂う幻想的な部屋を映像で埋め尽くす演出などを施している。

微細なミストが漂う空間に映像を照射する(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
微細なミストが漂う空間に映像を照射する(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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日本館の展示のクライマックスシーン(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
日本館の展示のクライマックスシーン(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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 砂漠が多いドバイでは貴重な水をたたえた水盤を、あえて建物の前に配置することで涼しさを表現している。水盤と並ぶように日本館レストランを設け、水に反射する日本館を眺めながら回転ずしを楽しめるようにしている。

「スシロードバイ万博店」が出店(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
「スシロードバイ万博店」が出店(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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 日本館の建築設計には永山祐子建築設計(東京・新宿)やNTTファシリティーズ、Arup(アラップ)などが参画。施工は大林組のグループ会社である大林ミドルイースト(UAE)が担当した。建物は地上2階建て、延べ面積は約3200m2、構造は鉄骨造だ。

 これまで日本館は計画途中で建物の規模を縮小したうえ、コロナ禍による資材調達の遅れや、感染対策に苦慮するなど想定外の出来事が続いた。それでも大林ミドルイーストは、遠い異国の地で期日中に日本館を完成させた。

建物の白いファサードと大きな水盤が際立つ。写真左の建物はレストランで、回転ずしチェーンのスシロー(事業者はFOOD & LIFE COMPANIES)が中東に初出店した(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
建物の白いファサードと大きな水盤が際立つ。写真左の建物はレストランで、回転ずしチェーンのスシロー(事業者はFOOD & LIFE COMPANIES)が中東に初出店した(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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日本館の平面図。台形の敷地を2つの三角形に分け、コンコース寄りの小さな三角形に水盤とレストラン、後方の大きな三角形に建物を配置した(資料:永山祐子建築設計)
日本館の平面図。台形の敷地を2つの三角形に分け、コンコース寄りの小さな三角形に水盤とレストラン、後方の大きな三角形に建物を配置した(資料:永山祐子建築設計)
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 ファサードをデザインした永山祐子氏は、日よけと風を通す役割を持つ立体格子とテント状の膜で「光と影」を表現しつつ、日本館自体が水と風の循環装置になることを念頭に置いた。ファサードは中東のアラベスク文様に似た日本の伝統的な「麻の葉文様」を3次元の立体格子で表現している。日本の折り紙のようにも見える。

 大きな水盤はエントランス回りに、涼しげな雰囲気をつくりだしている。単なる見た目だけでなく、水盤の上を通る風がファサードの膜をわずかに揺らしながら、水の気化熱を運んで半屋外空間を通り抜けていく構想だ。

館内のスロープで来場者を導く

 万博の来場者は、会場のコンコースから直線に延びるエントランス通路を進み、日本館に入る。正面エントランスを左に曲がる通路を抜けると、入場前の待合スペースに出る。

日本館のエントランスから入り、左手に抜ける通路。床にファサードの影が模様をつくる(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
日本館のエントランスから入り、左手に抜ける通路。床にファサードの影が模様をつくる(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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 館内では、建物の2階へとつながるスロープで来場者を導く。2階から1階に進む順路だ。

入場前の待機場所になる吹き抜け空間のスロープ。手すり用の壁ガラスを採用している(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
入場前の待機場所になる吹き抜け空間のスロープ。手すり用の壁ガラスを採用している(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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 暑いドバイでは、涼しくなる夜遅くまで万博会場を開ける。そのため、夜間照明が非常に重要になる。日本館ではファサードの白い膜に様々な色の照明を当てて、昼とは異なる表情を見せる。

開幕直前の21年9月に現地を訪れた、設計者の永山祐子氏。現場確認のなかでも、夜間照明のチェックが大きな目的だった(写真:永山祐子建築設計)
開幕直前の21年9月に現地を訪れた、設計者の永山祐子氏。現場確認のなかでも、夜間照明のチェックが大きな目的だった(写真:永山祐子建築設計)
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青くライトアップした日本館。夜も水盤にファサードが映り込み、建物が実物よりも大きく見える(写真:永山祐子建築設計)
青くライトアップした日本館。夜も水盤にファサードが映り込み、建物が実物よりも大きく見える(写真:永山祐子建築設計)
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ファサードの白い膜に照明を当てて、間接的に光らせて淡く見せている(写真:永山祐子建築設計)
ファサードの白い膜に照明を当てて、間接的に光らせて淡く見せている(写真:永山祐子建築設計)
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夜の待合スペースは昼間とは全く違う、幻想的な雰囲気に包まれる(写真:永山祐子建築設計)
夜の待合スペースは昼間とは全く違う、幻想的な雰囲気に包まれる(写真:永山祐子建築設計)
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 これから半年間、日本館ではアテンダントがそろいのユニホームを着て、来場者を出迎える。

開幕直前の内覧会で、エントランスに整列したアテンダント(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
開幕直前の内覧会で、エントランスに整列したアテンダント(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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アテンダントのユニホームも白が基調。ただし、光が当たるとカラフルな模様が浮かび上がる特殊な加工を施している。ユニホームデザインは、ファッションデザイナーの森永邦彦氏(中央)が担当(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
アテンダントのユニホームも白が基調。ただし、光が当たるとカラフルな模様が浮かび上がる特殊な加工を施している。ユニホームデザインは、ファッションデザイナーの森永邦彦氏(中央)が担当(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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光で模様が現れるユニホーム(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
光で模様が現れるユニホーム(写真:2020年ドバイ国際博覧会日本館広報事務局)
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