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 2019年10月の東日本台風で1級河川の千曲川が決壊し、甚大な浸水被害を受けた長野市長沼地区。市は台風襲来から約2年後の21年10月9日に開いた住民説明会で、同地区に災害公営住宅を建設しない方針を伝えた。市は安全対策の難しさなどを理由に挙げ、結論を出すのが遅れたことを住民に謝罪した。

長野市が住民説明会で配布した、長沼地区への災害公営住宅建設の要望に対する回答書(資料:長野市)
長野市が住民説明会で配布した、長沼地区への災害公営住宅建設の要望に対する回答書(資料:長野市)
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 長沼地区は、千曲川と支流の浅川に挟まれた平たんな低地で、過去に何度も水害に見舞われてきた。地区全体が洪水浸水想定区域に含まれており、最大で10~20m浸水する恐れがある。19年10月の東日本台風では住宅939件が被害を受け、そのうち561件が全壊と判定された。

東日本台風で浸水した長野市長沼地区周辺。19年10月13日撮影(写真:国土地理院)
東日本台風で浸水した長野市長沼地区周辺。19年10月13日撮影(写真:国土地理院)
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 地区の住民や外部の有識者などで構成する長沼地区復興対策企画委員会は20年9月、市に対して同地区への災害公営住宅の建設を要望。その後、市建設部住宅課も交えてワークショップを重ね、被災後に移転が決まった区内の長沼保育園と長沼児童センターの跡地を建設候補地としていた。この敷地は家屋倒壊危険区域ではないものの、上述のように洪水浸水想定区域に含まれている。

 市は住民らの要望を受けて検討を進めたが、要望から1年近くが経過しても結論が出なかった。このため同委員会は再三にわたって、市に回答を求めていた。

 市は21年10月の住民説明会で「浸水想定区域内で災害公営住宅を整備する場合、国の指示に従って安全確保をする必要があり、少なくとも2.5m以上の盛り土が必要になる。検討したが、十分な安全対策が難しい状況である」と回答。「入居希望者には高齢の方もおり、人家から離れた場所に、安全対策のために盛り土を行って、そこで生活することが身体的および心理的に苦痛となる恐れがある」などと、建設を断念した理由を説明した。

 市が21年9月に実施した調査で、以前は長沼地区での生活再建を希望していた5世帯が、隣接する豊野地区の災害公営住宅などに入居する意向を示したことも理由に挙げた。市は豊野地区で既存の市営住宅を解体し、鉄筋コンクリート(RC)造4階建て、73戸の災害公営住宅「美濃和田団地」を21年3月から建設中。同年11月末から12月上旬の入居開始を目指している。