帝国ホテルは2021年10月27日、36年度の完成を目指す「帝国ホテル 東京 新本館」のデザインアーキテクトに田根剛氏を選んだと発表した。選定理由について帝国ホテルの定保英弥社長は発表会で、「国内外の建築家を検討した。その中から将来有望な、若くて、世界でも経験があり、歴史を継承しながら未来に挑戦していく思いを共有、体現できる建築家にお願いした」と説明した。
公開された新本館イメージはひな壇状の宮殿を思わせる外観で、高層部を日比谷公園側からセットバックしている。基壇部は高さ約31mとし、かつての「100尺規制」にそろえて周辺ビルとの調和を図る。「詳細は今後検討していくが、過去の帝国ホテル本館を引き継ぐものとして、素材には石を使いたいと考えている」と田根氏は話す。客室数は現状よりも減らし、客室面積の拡大や機能更新により単価を上げる方向だ。
田根氏が外観をデザインする新本館は、1890年に開業した帝国ホテルにとって4代目の建物となる。現在、東京都千代田区に立つ3代目の本館は1970年に完成。築50年以上がたち、施設の老朽化が進んでいた。帝国ホテルは2021年3月に、本館とタワー館および駐車場ビルの建て替えを発表。総事業費2000億~2500億円程度を投じて、24年度から順次建て替える計画だ。新本館は31年度から36年度にかけて建て替える予定。
デザインアーキテクトの選考に当たり、帝国ホテルは国内外の設計事務所を対象にコンペを実施した。求めたのは、「品格・継承・挑戦」という3つのキーワード。田根氏はフランス・パリに拠点を置くAtelier Tsuyoshi Tane Architects(アトリエ・ツヨシ・タネ・アーキテクツ、ATTA)を立ち上げ、これまで、「エストニア国立博物館」(16年完成)や「弘前れんが倉庫美術館」(20年完成)など国内外のプロジェクトを手掛けてきた。
一貫するのが、場所の記憶から建築をつくる“Archaeology of the Future(アーケオロジー・オブ・ザ・フューチャー)”をコンセプトとしてきたことだ。考古学的アプローチで諸条件を調査し、デザインに落とし込む設計手法を強みとする。