福岡市天神地区の交差点角に新しく完成した「天神ビジネスセンター」は、福岡市が進める再開発促進事業「天神ビッグバン」の規制緩和を生かした第1号ビルだ。施工中にコロナ禍を受け、急きょ一部の計画を変更した。感染症対策を盛り込んだ点で、「天神ビッグバン」の先導役といえる。
「天神ビジネスセンター」は2019年1月に着工。その約1年後、コロナ禍に直面した。その時点で地下の躯体(くたい)工事を終え、鉄骨が立ち上がり始めていた。同ビルの事業者である福岡地所(福岡市)は計画を変更し、感染症対策を盛り込むことに決めた。
同社の田代剛建設部長は、「意思決定に要する時間を通常時の半分程度に抑えるよう社内調整をした。現場に無理をお願いしていることは承知していたが、利用者視点に立ち、新型コロナウイルスの感染対策を踏まえた建物のあるべき姿を模索した」と話す。
執務室にはPM2.5対策のフィルターやダイキン工業の空気浄化技術「ストリーマ技術」を搭載したダクト接続式除菌ユニットなどを設置。計画変更で、最大換気量を30m3/h・人から34.5m3/h・人に上げた。これは建築基準法で定められた必要換気量の約1.7倍だ。
エントランスにはエレベーター先行予報システムを導入した。利用者がセキュリティーゲートにカードをかざすと、最適なエレベーターへと誘導してくれるシステムだ。非接触で目的階に向かうことができる。また3Dディスプレーの無人受付機や非接触検温装置などを設置した。
この他、一部のトイレでは自動開閉のトイレブースを設置し、非接触でドアの開閉と施錠ができるようにした。