東京大学大学院工学系研究科建築学専攻が千葉学教授の総括で知見を結集し、築86年の講義室の改修計画を進めている。その名も「ドリーム講義室プロジェクト」。千葉教授は「歴史的空間を継承しつつ、先端技術を導入して今日的な要請に応える場所へと変えることがテーマ」と語る。その全貌が見えてきた。
改修するのは、東大本郷キャンパス内の工学部1号館15号講義室だ。扇形の座席配置が特徴で、工学部1号館に入る建築学科と社会基盤学科の講義の他、外部を招いたシンポジウムやセレモニーなどでも使用される。後に東京帝国大学総長を務める内田祥三(よしかず)氏の設計で1935年に竣工。95年に東大施設部と香山壽夫建築研究所(現・香山建築研究所)が設計・監理を担当し、ホワイエ部分を増床するなどの改修をした。
同プロジェクトは鹿島からの寄贈改修の提案によって実現した。基本設計は東京大学大学院工学系研究科建築学専攻で、千葉学教授が総括を務める。実施設計と施工は鹿島が担当する予定だ。2021年7月に基本設計を終え、現在は実施設計の価格調整を続けている。
歴史をつなぐグリッド下地に先端技術を設置
歴史的な空間を継承しつつ、今日的な要請に応える──。そのテーマを象徴的に表しているのが天井に計画しているグリッド下地だ。
千葉教授は「設備は躯体に比べて寿命が短く、設備更新のために天井を張り替える工事が多い。将来のメンテナンスや更新を考えた設計にしようと考えた」と話す。天井はグリッド下地のみとし、設備のメンテナンスや更新の際に天井の張り替え工事を省ける計画とした。グリッド下地はH型鋼を組み合わせてつくり、上下にライン照明を配置。側面には等間隔に穴を空け、音響・映像設備やセンサー機器などを取り付ける。
グリッド下地に設置したセンサー機器によって、在室人数や二酸化炭素濃度、空気温度、照度などをセンシングする予定。リアルタイムで設備の制御に反映するとともに、取得したデータを学内の研究に活用する計画だ。
先端技術を盛り込むグリッド下地は竣工時の格天井を踏襲した。竣工時の天井伏せ図は、講義室の後方から前方に向けて梁(はり)がハの字に開いた形が特徴。グリッド下地も同様に後方から前方に向けてマス目をハの字に広げ、歴史的な空間の継承を狙う。