ライフスタイルブランドを展開するSanu(東京・台東)は2021年11月11日、自然の中にもう1つの家を持つサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」を開始した。同サービスは会員数の上限を設定しており、11月10日時点で1000人弱が“行列”をつくっている。その特徴とは。
SANU 2nd Homeは、同社が新設する「SANU CABIN」に月額課金制で自由に宿泊できるサービス。料金プランは、月額会費が5万5000円(税込)。宿泊料は月曜日〜木曜日は無料、金曜日〜日曜日と祝・祝前日が1泊1部屋5500円(税込)となる。1人が会員であれば家族・友人など合計4人までが宿泊できる。
21年11月11日に、長野県立科町の白樺湖湖畔と山梨県北杜市の八ケ岳南嶺に計5棟をオープンする。2022年春までに計7拠点、50棟に拡大する予定だ。
初期会員の先行申し込みを21年4月〜7月に受け付け、会員数上限を大きく超える1500人の申し込みがあった。抽選で会員を決定し、その後、会員枠が増え次第、順次会員となれる「ウェイティング登録」を受け付けたところ、11月までに1000人弱の登録があった。現在は、サブスクを開始するのに順番待ちをしなければならない状態だ。
特徴は自然の中に住まうためのキャビンの設計にある。木造で壁式構造のキャビンは、ADX(福島県二本松市)が設計した。大きな開口部から自然を借景し、光も取り込む。「Live with nature(自然と共に生きる)」というSanuのコンセプトを表現した形だ。
キャビン1棟の延べ面積は66.69m2で高さは7.5m程度(キャビンが建つ斜面の角度によって異なる)。しつらえた曲面の間仕切りが内部の最大の特徴だ。曲面に加工された木はもともと1枚の薄板で、両側から細かい切れ込みを入れることで剛性を下げ、それを現場で曲げて設置している。
キャビンの内部は完全には仕切られず、曲面の間仕切りによって緩やかにつながっている。広々とした空間を保ちながら、デスクなどのワークスペースとベッドスペースなどの各スペースを仕切る役割を持つ。
SANU CABINの木材は全て岩手県釜石市産のスギ材を使う。柱や壁、デスクなどを単一の木材から切り出す加工をADXがコンピューター上で設計し、原木を立米単位で調達する。
Sanuは釜石地方森林組合と連携しながら独自の環境再生型プログラムも進める。収益の一部を使って、来春までに新設するキャビン50棟に相当する7500本の木を釜石地方に植林する予定だ。試算では、このプログラムによって初期の50棟で4600tのカーボンネガティブ(CO2吸収量が排出量を上回ること)を実現するという。
サービス開始までの道のりと手応えを、Sanuで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める福島弦氏と、代表取締役Founder/Brand Directorの本間貴裕氏、ADXで代表取締役を務める安齋好太郎氏に聞いた。
実際にSANU CABINが建ち、いよいよサービスが始まります。
福島弦・Sanu代表取締役CEO:ここまで1つの建築を立ち上げることに集中してきました。結果として、純粋に自信を持って世に出せるものができた。人と自然をつなげるキャビンが紛れもなく実現できています。
私も実際に試泊して、生活様式を変えうるサービスになると実感しています。この空間なら、自分の人生の中で繰り返し通って四季を感じ、その中で生活をして仕事をしていけるという自信があります。
事業としても、回るモデルは既にできています。本間(本間貴裕・Sanu代表取締役Founder/Brand Director)とADXの安齋さん(安齋好太郎・ADX代表取締役)の「こういうものをつくりたい」という熱意とアイデアがあり、私は「事業として成立するのか」「体験の数を増やすことができる提案なのか」というサービスサイドの観点から綱引きをしてきました。その結果として、事業的にも成長できるモデルになっています。