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 2021年4月に東京都八王子市のアパートで発生した屋外階段の崩落事故。事故を受けて国土交通省は、工事監理や完了検査でのチェック内容を明確化するなど、規制強化に踏み切る。21年11月26日に開催した社会資本整備審議会の建築物等事故・災害対策部会(部会長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)で、建築基準法施行規則や告示の一部改正による再発防止策を提示。同部会で承認を得た。

屋外階段が崩落したアパートの外観。ブルーシートで覆われているのが、崩落した箇所だ(写真:池谷 和浩)
屋外階段が崩落したアパートの外観。ブルーシートで覆われているのが、崩落した箇所だ(写真:池谷 和浩)
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 八王子のアパートで発生した事故は、鉄骨階段と踊り場の接合部に使用していた木材の腐食が原因とみられる。国交省の調査によると、アパートの施工者である則武地所(相模原市、事故後に自己破産を申請)が過去に手掛けた物件は東京都と神奈川県で計241件。うち214件に設置されている屋外階段は、事故があったアパートと同様に鋼製の階段を木製の梁(はり)などで支持していた。

崩落した屋外階段のイメージと、則武地所が施工した共同住宅の劣化状況。東京都と神奈川県で則武地所が施工した共同住宅241件のうち214件の屋外階段は、事故があったアパートと同様に鋼製の階段を木製の梁などで支持していた(資料:国土交通省)
崩落した屋外階段のイメージと、則武地所が施工した共同住宅の劣化状況。東京都と神奈川県で則武地所が施工した共同住宅241件のうち214件の屋外階段は、事故があったアパートと同様に鋼製の階段を木製の梁などで支持していた(資料:国土交通省)
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 こうした調査結果などを踏まえて同省が示した再発防止策は、「設計時における防腐措置などの内容の明確化」「工事監理および完了検査時における屋外階段のチェック内容の明確化」「適切な維持管理の確保」の3つだ。

 国交省住宅局建築指導課の岡野大志企画専門官は、「事故の詳しい原因は警察が捜査中のため、現時点で明らかになっていない。そのため、現行制度の課題を洗い出して再発防止策として整理した」と説明する。

赤色で強調した部分が、国土交通省が示した再発防止策。工事監理や検査でのチェック内容を明確化するなど、規制強化に踏み切る(資料:国土交通省)
赤色で強調した部分が、国土交通省が示した再発防止策。工事監理や検査でのチェック内容を明確化するなど、規制強化に踏み切る(資料:国土交通省)
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 まずは設計時の対策について。確認申請時に提出する図書の内容が大きく変わる。国交省は建基法施行規則別記2号様式などを改正し、確認申請書の「19.備考」欄に、木造の屋外階段を設ける場合はその旨を記載するように求める。さらに、建基法施行規則1条の3を改正し、「屋外階段の木造部分」や「防腐措置の具体的な仕様」などを明記した設計図書の提出を義務付ける。

 明示を義務付けるのは、全ての部材が木造の屋外階段だけでなく、「建築物の木造部分と接合する鉄骨造の屋外階段」や「木造と鉄骨造を併用した屋外階段」、「屋外階段と建築物の木造部分との接合部」など、屋外階段の一部に木材を使用しているものも対象になる。

防腐措置の仕様などの明示を求める屋外階段のイメージ(資料:国土交通省)
防腐措置の仕様などの明示を求める屋外階段のイメージ(資料:国土交通省)
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 防腐措置の具体的な仕様や屋外階段の支持方法などについては、21年8月に設置した「屋外階段の防腐措置等検討TG」(委員長:福山洋・建築研究所理事)が22年1月をめどに取りまとめるガイドラインを用いて周知する。

 明示方法について岡野企画専門官は、「新たに屋外階段の詳細図の提出を求めるのか、これまで提出を求めていた設計図書に追記させるのかなど、現時点で詳細は決まっていないが、建築士の負担が重くならないようにしたい」と説明する。