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 厚生労働省は、事務所における便所の設置基準を定めた「事務所衛生基準規則」と「労働安全衛生規則」を改正し、2021年12月1日に施行した。1972年に規定を設けて以来、約50年ぶりの改正となる。

便所の設置基準に関する改正内容の概要(資料:厚生労働省)
便所の設置基準に関する改正内容の概要(資料:厚生労働省)
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 大きな改正点は、事務所衛生基準規則17条で定めた便所の設置基準。2つの内容を追加した。1つ目は、少人数の事務所における例外規定。同時に就業する労働者が常時10人以内の場合に限り、男女共用の独立個室型の便所を1カ所設ければよいこととした。

 もう1つは、独立個室型の便所を設置する場合の緩和規定。男性用と女性用の便所を別々に設置したうえで独立個室型の便所を追加する場合に、男性用大便所の便房(間仕切りで囲まれた空間)、男性用小便所、女性用便所の便房を一定程度減らせるようにした。

 改正の理由は複数ある。まず、改正前の規則には多機能トイレなど男女兼用の独立個室型の便所を、便所として取り扱える規定がなかった。また、少人数の事務所では建物の構造上、便所を1つしか設けられず、男女別の設置が困難な場合がある。さらに、性的少数者が利用しやすいようにするなど、便所に対するニーズは多様化している。

 こうした課題に対応するため、厚労省は有識者による「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」(座長:高田礼子・聖マリアンナ医科大学教授)や「労働政策審議会安全衛生分科会」(分科会長:城内博・労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センター長)で意見を求め、改正に至った。

 ただし、改正に至るまでには曲折があった。2021年6月に実施した意見公募で、例外規定に対する反対意見が多く寄せられたのだ。