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 大阪・北新地で発生した雑居ビル火災は、25人の死者を出す大惨事となった。2方向避難が確保されていなかったことが、被害を拡大した可能性がある。総務省消防庁は類似のビルの調査を全国に要請した。

 2021年12月17日午前10時20分ごろ、大阪市北区に立つ鉄骨鉄筋コンクリート造8階建ての「堂島北ビル」で火災が発生し、28人が死傷した。4階に入居していた診療所「西梅田こころとからだのクリニック」の入り口付近で男が放火したのが原因とみられる。現場はJR北新地駅に近い繁華街の一角で、周りには飲食店や雑居ビルが立ち並ぶ。

 1970年に竣工した堂島北ビルの建築面積は104m2、延べ面積は700m2。4階部分の25m2が燃えた。上下階への延焼は確認されていない。

堂島北ビル。3方向を建物に囲まれていた。火災発生翌日の2021年12月18日に撮影(写真:日経クロステック)
堂島北ビル。3方向を建物に囲まれていた。火災発生翌日の2021年12月18日に撮影(写真:日経クロステック)
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火災が発生した4階部分(写真:日経クロステック)
火災が発生した4階部分(写真:日経クロステック)
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堂島北ビルはJR大阪駅から500mほどの場所に立つ。前面道路の交通量は多い(写真:日経クロステック)
堂島北ビルはJR大阪駅から500mほどの場所に立つ。前面道路の交通量は多い(写真:日経クロステック)
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 現場には消防車両80台が出動。火災は2021年12月17日午前10時46分にほぼ消し止められ、同日午後5時4分に鎮火した。この火災で、4階にいた27人が心肺停止状態で病院に搬送され、12月21日時点で25人の死亡が確認された。死因は一酸化炭素中毒だとみられる。

 火災に詳しい東京理科大学大学院の水野雅之准教授は火災時の映像を基に、「窓ガラスが脱落せず室内に流入する酸素量が限られたため、一酸化炭素が発生しやすい環境だったのではないか」と推測する。

 建築基準法施行令121条では、用途と面積に応じて避難階や地上に通じる直通階段を2つ以上設けるよう求めているが、堂島北ビルには北側に階段室とエレベーターが1つずつあるのみで、2方向避難は確保されていなかった。

堂島北ビル4階の平面図のイメージ。男が放火したとみられる診療所の入り口付近が激しく燃えていた(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
堂島北ビル4階の平面図のイメージ。男が放火したとみられる診療所の入り口付近が激しく燃えていた(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
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