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 解体か、利活用か――。世界的建築家の丹下健三(1913~2005年)が設計した旧香川県立体育館(高松市、1964年竣工)の行方に注目が集まっている。2014年に閉館したが、利活用を望む声が多く、県は旧県立体育館への対応について検討を続けてきた。21年7月、県は民間事業者から提案を募って利活用方法や改修方法を検討するサウンディング型市場調査を実施。22年1月17日に調査結果を公表した。

旧香川県立体育館の北西側外観。同じく丹下健三が設計を手掛けた国立代々木競技場(東京都渋谷区)と同時並行で設計が進められた(写真:日経クロステック)
旧香川県立体育館の北西側外観。同じく丹下健三が設計を手掛けた国立代々木競技場(東京都渋谷区)と同時並行で設計が進められた(写真:日経クロステック)
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湾曲する格子梁(はり)が空に向かってせり上がっていくように見える(写真:日経クロステック)
湾曲する格子梁(はり)が空に向かってせり上がっていくように見える(写真:日経クロステック)
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 旧県立体育館は鉄筋コンクリート(RC)造の地上3階建てで、延べ面積は4707m2。和船をイメージさせる独特な外観が特徴だ。大空間を実現するためにワイヤで屋根を吊(つ)るという特殊な構造を採用している。1966年にはBCS賞を受賞した。

 しかし、98年度に丹下健三・都市・建築設計研究所(現・丹下都市建築設計)が実施した調査で、耐震性能の不足が明らかに。2012年にはアリーナの天井が落下する恐れがあることが判明した。県は12年に耐震改修工事の実施をいったん決めるも、莫大な工事費を要することや、天井が低いため競技施設としての機能を果たせないことを理由に断念。旧県立体育館は取り壊しの危機に直面した。

 その後、県内の建築設計者を中心とした保存活動が活発になり、17年には米国のワールド・モニュメント財団(WMF)が世界的な建築物のうち緊急に保存が必要な「世界危機遺産リスト」に選定するなど、利活用を望む声が大きくなっていった。

 旧県立体育館の利活用方法を模索していた県はサウンディング型市場調査を実施することとした。その結果、9団体から10提案が寄せられた。各団体の構成員は非公表だ。提案された利活用方法は、演劇を行う舞台やリハビリテーション施設、文化拠点施設など様々で、都市のモニュメントとして存続させるといった内容のものもあった。

 しかし、県教育委員会保健体育課の担当者は日経クロステックの取材に対して、「非常に厳しい結果と受け止めている」とした。県が市場調査を実施した背景には「どのように利活用すれば、莫大な改修費を回収できるか」というアイデアを募集する狙いもあったが、「県が財政負担をすることを想定しているものや、具体的な数字が示されていない提案が多かった」(県教委保健体育課)からだ。

 もともと募集段階で県は、耐震改修工事や運営にかかる費用は事業者が負担するものとして、投資額の回収方法の記載を求めていた。しかし、提案には「改修費は県が負担」「県の金銭的補助」「県のふるさと納税制度を活用した投資資金の確保」といった内容が多く、なかには「民間事業者にとって、耐震改修費を独自で負担することはハードルが高い」と指摘する団体もあった。