審査の結果、1位と2位の評価点が僅差だったために両者と交渉し、2位の事業者を選定した――。京都府和束町の「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」における設計者選定プロセスが物議を醸している。審査で1位となった事業者を受注候補者として交渉し、まとまらなければ2位と交渉するというルールを町が自ら破ったうえ、そのことについて丁寧に説明していないからだ。
このプロポーザルは、築50年以上が経過した社会福祉センターを解体し、国保診療所と複合化した総合保健福祉施設を整備するために同町が2021年に実施した。設計者を選定するプロポーザルに技術提案書を提出したのは19者。1次審査に当たる書類審査を経て、10者がプレゼンテーションとヒアリングによる2次審査に進んだ。
選定委員会(委員長:長坂大・京都工芸繊維大学教授)は2次審査で応募者の経験や能力、提案書の内容、経費の見積価格などを点数化し、100点満点で評価。73.87点のteco(東京・台東)を1位に、73.35点のシーラカンスアンドアソシエイツ(東京・渋谷、以下シーラカンス)を2位に選定した。その差は0.52点だった。
和束町のプロポーザル募集要領では、選定委員会の審査を経て「受注候補者と第2位の計2者を選定」し、契約に当たっては「受注候補者と町が委託契約の締結に向けた交渉を行ったうえで、随意契約の手続きに進む。交渉が整わない場合は、第2位と町が交渉を行う」などと定めている。
この要領に従えば、町はたとえ僅差であっても1位となったtecoを受注候補者に選定し、同社と最初に交渉しなければならない。ところが町はウェブサイト上で、「選定委員会において選定された第1位と第2位の評価点が僅差であることから、両者を受注候補者に特定し、それぞれに対して交渉を行った」結果として、22年2月9日付で2位のシーラカンスと設計業務委託契約を締結したと発表している。
つまり、町はtecoとの交渉が不調に終わったためシーラカンスとの交渉に移ったのではなく、自ら定めた要領に反してシーラカンスを受注候補者に「格上げ」し、同時に交渉を進めたことになる。日経クロステックの取材に対して町総合施設整備課は、「発表した通りだ。評価点が僅差だという審査結果を受けて2者と交渉することにした。公表していること以外に説明することはない」と回答した。
tecoの金野千恵代表は「選定委員会の審査結果を覆したにもかかわらず、経緯や理由について、町からは何の説明もない」と憤る。