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 町が情報公開をしていないのは遺憾だ――。京都府和束町の「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」における不透明な設計者選定プロセスが、建築界に波紋を広げている。同プロポーザルの審査で次点だったものの、その後の交渉で町に受注者として特定されたシーラカンスアンドアソシエイツ(東京・渋谷、以下シーラカンス)が2022年3月20日に声明を出し、町に対して選定の経緯などを説明するよう求めた。

シーラカンスアンドアソシエイツが同社ウェブサイト上で公表した声明文。和束町が設計者選定のプロセスや、選定理由などの詳細を説明していないことに対して、同社は「遺憾に思う」とした(資料:シーラカンスアンドアソシエイツ)
シーラカンスアンドアソシエイツが同社ウェブサイト上で公表した声明文。和束町が設計者選定のプロセスや、選定理由などの詳細を説明していないことに対して、同社は「遺憾に思う」とした(資料:シーラカンスアンドアソシエイツ)
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 問題のプロポーザルは、和束町が21年に実施したものだ。選定委員会(委員長:長坂大・京都工芸繊維大学教授)が、2次審査に進んだ10者の経験や能力、提案書の内容、経費の見積価格などを点数化し、100点満点で評価。73.87点のteco(東京・台東)を1位に、73.35点のシーラカンスを2位に選定した。その差は0.52点だった。

 和束町のプロポーザル募集要領では、選定委員会の審査を経て「受注候補者と第2位の計2者を選定」し、契約に当たっては「受注候補者と町が委託契約の締結に向けた交渉を行ったうえで、随意契約の手続きに進む。交渉が整わない場合は、第2位と町が交渉を行う」などと定めている。

 ところが町は、選定委員会による評価が僅差だったことを理由に、tecoとシーラカンスの2者と同時に交渉を進めた。交渉の結果、町はシーラカンスを特定。22年2月9日付で同社と設計業務委託契約を締結した。日経クロステックの取材に対してtecoの金野千恵代表は「審査結果を覆したにもかかわらず、経緯や理由について、町からは何の説明もない」と回答。選定委員会で委員長を務めた長坂教授は「裏切られたような感覚で、極めて不愉快だ。町は詳細な経緯を公表すべきだ」と語っている。

 受注者のシーラカンスも日経クロステックの取材に対して、経緯などに疑問を抱いていると回答していた。声明を出したのは、同社の立場を明らかにするためだ。声明によると、和束町から22年1月18日付で「上位2者との交渉により、受注者を特定する」といった内容の通知が届いた際、同社は「町と選定委員会の間で検討した結果、そのような結論に至ったのだろうと理解していた」という。加えて、「通常とは異なる選定方法になるので、その経緯については審査結果発表時に和束町より説明がなされるであろうとも思っていた」とする。