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 大成建設は2022年4月1日、自動車部品大手のアイシンと脱炭素コンクリートに関する共同開発契約を締結したと発表した。アイシンはアミノ酸を利用して排ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)を炭酸カルシウムとして固定化する技術を持つ。この技術を大成建設が開発した「T-eConcrete/Carbon-Recycle(ティー・イーコンクリート/カーボンリサイクル)」に適用して、コンクリートの製造過程におけるCO2排出量収支をマイナスにする。30年ごろまでの実用化を目指す。

大成建設は同社技術センターの通路で、T-eConcrete/Carbon-Recycleを用いた舗装を試験的に施工した(写真:日経クロステック)
大成建設は同社技術センターの通路で、T-eConcrete/Carbon-Recycleを用いた舗装を試験的に施工した(写真:日経クロステック)
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 T-eConcrete/Carbon-RecycleはCO2の実質的な排出量をマイナスにするコンクリート。その仕組みはこうだ。

 まず、セメントを製鋼副産物である高炉スラグに置換する。これによりCO2排出量を普通コンクリートと比べて8割ほど減らす。そのうえで排ガスなどから回収したCO2を原料とした炭酸カルシウムを投入する。炭酸カルシウムには1m3当たり98~171kgのCO2を固定する効果がある。これらを組み合わせることで、コンクリート1m3当たり45~116kgのCO2を大気中から減らせる計算だ。

 「100m2程度の鉄筋コンクリート造住宅で普通コンクリートを全てT-eConcrete/Carbon-Recycleに置き換えた場合、CO2の削減量は一般家庭が10年間に排出する量に相当する」と大成建設社会基盤技術研究部材工研究室の大脇英司主幹研究員は話す。

 大成建設はこれまで、石灰石を焼成する際に放出されるCO2を利用して炭酸カルシウムをつくっていた。T-eConcrete/Carbon-Recycle を発表した21年2月時点で、排ガスなどに含まれるCO2を原料とした炭酸カルシウムが手に入りにくかったからだ。

 そこで目を付けたのが、アイシンの特許技術だった。一般に流通しているアミノ酸水溶液に産業副産物を溶かして、カルシウムを高効率で抽出する。そこに排ガスなどに含まれるCO2を吹き込むことで、炭酸カルシウムとして固定化し、析出させる。温度調節やCO2濃縮といった化学処理が要らず、アミノ酸水溶液を繰り返し使用できるのが利点だ。アイシンの技術は、T-eConcrete/Carbon-Recycleに欠けていた最後のピースだと言える。

 アイシン総合企画部サステナビリティ推進室の三矢朋輝主任はこう話す。「アミノ酸以外の水溶液を使ってCO2を炭酸カルシウムとして固定化する技術は他にもあるが、当社の技術なら他社と比べて水溶液1m3当たりで10倍の量のCO2を固定化でき、効率がいい」

アミノ酸を利用してCO<sub>2</sub>を炭酸カルシウムとして固定化するプロセス(資料:アイシンの資料を基に日経クロステックが作成)
アミノ酸を利用してCO2を炭酸カルシウムとして固定化するプロセス(資料:アイシンの資料を基に日経クロステックが作成)
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