「本件をプロポーザル方式の信頼を失墜させるものとしてはならない」。京都府和束町が2021年に実施した「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」における不透明な選定プロセスが波紋を広げている。日本建築家協会(以下、JIA)は22年4月22日、「自治体等による設計プロポーザルの運営に対する意見表明」と題する文書を公表した。
JIAは同プロポーザルについて、「募集要領は、若手建築家や経験の少ない設計事務所にも広く応募の機会を提供する配慮がなされている」と評価。その一方で、「募集要領とは異なった運営がなされ、関係者に混乱を与えたことは、大変残念であると受け止めている。関係者への説明を十分にすべきだった」などと指摘した。
JIAの筒井信也専務理事は、「国土交通省や日本建築士事務所協会連合会、日本建築士会連合会などと定期的に開催している会議で、この問題を議題にしたい。まずはJIAの支部を通して、全国の自治体にプロポーザルの注意点などを周知していきたい」と説明する。
同プロポーザルでは、選定委員会(委員長:長坂大・京都工芸繊維大学教授)が2次審査に進んだ10者の能力や提案書の内容などを点数化し、100点満点で評価。73.87点のteco(東京・台東)を1位に、73.35点のシーラカンスアンドアソシエイツ(東京・渋谷、以下シーラカンス)を2位に選定した。
プロポーザル募集要領では、1位の事業者を受注候補者とし、委託契約の締結に向けた交渉を行って、交渉が整わない場合は2位と交渉すると定めていた。しかし、町は選定委員会の評価が僅差だったことを理由に、tecoとシーラカンスの2者と同時に交渉を進めた。交渉の結果、町はシーラカンスと設計業務委託契約を締結した。町は選定に至った経緯や理由の詳細を明らかにしていない。