日建設計(東京・千代田)など5社は2022年5月9日、既存の地域冷暖房システムの運転を効率化するためのAI(人工知能)を開発したと発表した。AIを組み込んだコンピューターを設置し、既存のシステムから運転データを読み込ませるだけで導入できる手軽さが売りだ。
地域冷暖房では、冷水や温水などをまとめて製造し、対象エリア内の複数の建物に供給する。街区全体で二酸化炭素(CO2)の排出を削減できるうえ、建物ごとに熱源設備を設ける必要がないため安全性が高まるほか、スペースを有効活用できるのもメリットだ。
ただし課題もある。国内の地域冷暖房133件のうち竣工から20年を経た施設は約9割を占め、機器の経年劣化による省エネルギー性能の低下が進む。脱炭素に関心が高まるなか、正確な熱需要予測に基づいて運転を効率化したいというニーズも増している。
そこで開発したのが、設備機器の運転を支援する「AI地域冷暖房(AIちれい)」。次の3つのAIから成る。1つ目は、気象データやスケジュール、過去の熱需要量や送水流量などを基に需要を予測するAI。熱源機の運転台数を最小限に抑え、省エネに役立てる。過去のデータを用いた模擬運転では、熱需要量を99%の精度で予測できると確認した。