資材高騰と労務費上昇の影響で、美術館や庁舎といった大型公共事業の建設費が、当初予算を超過する事態が各地で発生している。建設費を削減するために仕様を変更するなど、関係者は対応に追われている。
その1つが2025年春の開館に向けてBTO(建設・移管・運営)方式のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)で整備中の鳥取県立美術館。20年3月にPFI事業者と契約した時点で約60億1864万円だった建設費が、約3億7235万円増加すると判明した。内訳は資材費が約3億75万円、労務費が約7160万円。県が22年4月21日に示した。
建設費が増加したため、県は収蔵庫内の免震装置台数や展示ケースの台数、非常用発電機の仕様を見直して1億1000万円を削減。残りを、事業者が9028万円、県が約1億7207万円負担する方針を決めた。県は5月31日に始まった議会で増加分の予算を要求している。
鳥取県立美術館は鉄筋コンクリート(RC)造、一部鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造・鉄骨(S)造の地上3階建てで、延べ面積は約1万m2。整備運営事業者は大和リースを代表とする10社の企業グループ。設計者は槇総合計画事務所・竹中工務店JV(共同企業体)だ。
事業者の負担額は、契約時の建設費の1.5%に当たる。物価上昇時に公共工事の請負金額を変更する「単品スライド条項」で受注者の負担割合としている1%よりも大きい。
鳥取県教育委員会事務局美術館整備局は「PFI事業であることを鑑みた。公共工事標準請負契約約款の逐条解説で、『経営上最小限必要な利益まで損なわれないよう配慮した基準』とされている事業者負担割合を適用した」などと説明した。