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 PC(プレストレストコンクリート)床版とCLT(直交集成板)パネルの壁・天井で構成し、建具や設備機器まで取り付けた宿泊室のユニットを、タワークレーンの遠隔操作によって地上から約15mの高さの5階まで持ち上げ、次々に並べていく──。

鹿島の「フライングボックス工法」ではユニット化した個室をクレーンで揚重する(写真:日経クロステック)
鹿島の「フライングボックス工法」ではユニット化した個室をクレーンで揚重する(写真:日経クロステック)
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 鹿島が2022年5月31日に現場で公開した「フライングボックス工法」は、建物の一部をユニット化して組み立てることで生産性や安全性などの向上を狙った新工法だ。同社はこの工法を、22年12月の竣工を目指す同社グループの研修施設「(仮称)鶴見研修センター」(横浜市)の新築工事に初適用した。

 鶴見研修センターは、ロボットやデジタル技術など先端技術を投入して施工を進める鹿島の肝煎りプロジェクトだ。施設は鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造と木造の5階建てで、延べ面積は約5800m2。1階と2階が研修エリア、3~5階が宿泊エリアになっている。宿泊エリアには81室の宿泊室を設ける。このうち4階と5階の計28室をフライングボックス工法で施工している。

鶴見研修センターに使用したユニットの設置イメージ。同センターの設計・施工は鹿島が担当している(資料:鹿島)
鶴見研修センターに使用したユニットの設置イメージ。同センターの設計・施工は鹿島が担当している(資料:鹿島)
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 フライングボックス工法は、壁で細かく部屋を分けるマンションやホテル、病院といった建物用途に適しているという。同工法について鹿島建築管理本部の尾崎悦広グループ長は、「在来工法に比べて、天候に左右されず計画的に施工を進められる。仕上げ材の揚重回数、高所作業が減って生産性と安全性が向上することなどが特長だ」と話す。

 同工法の基になっているのは、PPVC(Prefabricated Prefinished Volumetric Construction)と呼ぶシンガポール政府が推進する工法だ。建築のモジュールを工場生産して現場に運び、クレーンで組み立てる。鹿島はシンガポールの現地法人を通じて、日系建設会社では初めてPPVCを実践した経験を持つ。ただし、同工法を日本でそのまま適用するには耐震性や運搬できる躯体(くたい)サイズの制約といった課題があった。

 そこで考案したのがフライングボックス工法。日本の基準類や施工条件に適合するCLTパネルを採用し、シンガポールで得た知見を日本流にアレンジした新しいユニット化工法だ。

 施工は次のような手順で進めている。

 まず建設現場の地組みヤードに厚さ200mmのPC床版を設置。プレカットした厚さ90mmのCLTパネルで壁4面と天井1面を組み立てる。その後、サッシや家具、シャワーユニットを取り付け、天井を仕上げる。完成したユニットの大きさは幅2.9m、奥行き4.2m、高さ2.8m。重量は約12トンだ。

CLTを用いたユニットのイメージ。1ユニットの大きさは幅2.9m、奥行き4.2m、高さ2.8m(資料:鹿島)
CLTを用いたユニットのイメージ。1ユニットの大きさは幅2.9m、奥行き4.2m、高さ2.8m(資料:鹿島)
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組み立てたCLTユニットをタワークレーンで揚重する(写真:日経クロステック)
組み立てたCLTユニットをタワークレーンで揚重する(写真:日経クロステック)
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 このユニットをタワークレーンで揚重し、所定の位置に設置する。その後、ユニット間のPC床版の目地に無収縮モルタルを充填。強度の発現を確認した後、PC鋼材によって最大10ピースのPC床版を緊張して一体化する。最後にPC床版と建物の躯体も、コンクリートを打設して一体化する。

 鹿島建築管理本部副本部長の伊藤仁専務執行役員は、「今回は5階建てだが、防耐火の課題をクリアすれば構造的には何層でも造れる。高層になればなるほどフライングボックス工法の生産効率は上がっていく」と同工法に期待を寄せる。