帝国データバンクは2022年6月8日、中小企業などを対象とした価格転嫁の動向に関するアンケート結果を発表した。建設業における価格転嫁率は41.3%だった。100円分の仕入れコスト上昇に対して、41.3円分しか工事費に転嫁できていないことを示している。
建設業の転嫁率は全業界平均の44.3%を下回った。最も高かったのは卸売業の58.3%で、最も低かったのは金融業の3.3%だった。
建設業で「多少なりとも転嫁できている」と回答した企業は79.2%で、全業界平均の73.3%を上回った。「新規案件では転嫁後の見積もりを提示する」(土木工事業)、「転嫁しやすいように見積もりの有効期限を1カ月にする」(建築工事業)といった回答があった。
一方で、14.7%の企業が「全く転嫁できていない」と回答した。自由回答では、「官庁向けは転嫁できているが、民間向けは認められない」(給排水・衛生)、「価格転嫁した見積もりを作成しても失注する」(型枠大工)といった厳しい声が上がった。
ロシアのウクライナ侵攻を受けた原材料費の高騰や円安の進行などで、仕入れコストの上昇が続いている。経済産業省は22年5月24日に開いた中小企業政策審議会の専門委員会で下請中小企業振興法に基づく「振興基準」の改正案を示し、価格交渉や価格転嫁の促進に取り組む。こうした背景のなか、帝国データバンクは価格転嫁の実際の状況についてトレンドを調査した。
同社が業界別、業種別の価格転嫁率を発表したのは今回が初めて。同社の石井ヤニサ主任研究員は「詳細な分析は今後の課題。業界や業種にかかわらず仕入れ価格と販売価格のかい離が続いている。今後も同様の調査を実施してデータを収集する予定だ」と話す。
アンケート調査はインターネット上で22年6月3~6日に実施した。調査対象は同社が毎月実施する景気動向調査の協力先企業。有効回答数は1635社で、そのうち1432社が中小企業だった。建設業は土木工事、建築工事、設備工事などを手掛ける259社が回答し、そのうち中小企業が207社だった。