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 法的な問題がないことを確認し、行政裁量権により特定した――。京都府和束町が2021年に実施した「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」について、堀忠雄町長は22年6月7日の和束町議会議員全員協議会でこう説明した。

 同プロポーザルでは、設計者の選定プロセスに対する疑問の声が各所から上がっていたものの、これまで町は詳細な説明を避けてきた。議会が経緯などについて説明するよう町に要請し、堀町長が応じた。

和束町が2022年6月7日の全員協議会で議員に配布した資料の概要。町総合施設整備課の担当者がこの資料を基に、設計者選定までの過程などを説明した(資料:岡本正意町議)
和束町が2022年6月7日の全員協議会で議員に配布した資料の概要。町総合施設整備課の担当者がこの資料を基に、設計者選定までの過程などを説明した(資料:岡本正意町議)
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 同プロポーザルでは、外部の識者や副町長などから成る選定委員会(委員長:長坂大・京都工芸繊維大学教授)が、2次審査に進んだ10者の能力や提案書の内容などを点数化し、100点満点で評価。73.87点のteco(東京・台東)を1位に、73.35点のシーラカンスアンドアソシエイツ(東京・渋谷、以下シーラカンス)を2位に選定した。

 町のプロポーザル募集要領では、1位の事業者を受注候補者として、委託契約の締結に向けた交渉を行い、交渉が調わない場合は2位と交渉すると定めていた。しかし、町は選定委員会の評価が僅差だったことを理由に、tecoとシーラカンスの2者と同時に交渉を進めた。交渉の結果、町はシーラカンスと設計業務委託契約を締結した。

 これに対してtecoやシーラカンスはそれぞれ22年3月25日までに声明を発表。シーラカンスは町に対して選定経緯に関する詳しい説明を求めた。tecoやその協力事務所は連名で、日本建築学会や日本建築家協会(JIA)などに嘆願書を提出。同学会やJIAが町の対応に苦言を呈していた。

 22年6月7日の全員協議会で和束町は、出席した議員にこの問題に関する資料を配布。町総合施設整備課の担当者が資料を基に、設計者選定の経緯を説明した。日経クロステックが入手した資料によると、2者と同時に交渉を行った経緯について町は、おおむね以下のように記している。

 「選定委員会の審査結果によると、tecoとシーラカンスの評価点の差は小数点以下の僅差だった。審査講評では『ともに和束町の特性をよく理解され、町のシンボルとなると見込まれる提案である』などと評価されたため、町は行政裁量権により両者を受注候補者に特定した」

和束町が2022年6月7日の全員協議会で議員に配布した資料の一部。行政裁量権により、tecoとシーラカンスの2者を受注候補者に特定したとしている(資料:岡本正意町議)
和束町が2022年6月7日の全員協議会で議員に配布した資料の一部。行政裁量権により、tecoとシーラカンスの2者を受注候補者に特定したとしている(資料:岡本正意町議)
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 全員協議会では経緯の説明後、非公開で質疑応答が行われた。出席した岡本正意町議によると、議員からは「なぜルール通りの手順で進めなかったのか」「『僅差』とはどこまでの範囲を指すのか」といった質問が挙がった。しかし、堀町長は「行政裁量権で特定した」とし、町総合施設課の担当者も明確な回答をしないまま、議会は散会したという。

 堀町長などの姿勢について岡本町議は、「なぜ裁量権を持ち出してルールから外れた手順で進めたのか。既に町のウェブサイトで公表されている情報をなぞっただけで、肝心な部分は何も分からなかった。町には説明を尽くす姿勢がなかった」と指摘した。