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 大阪市西成区で2021年6月に住宅地の擁壁が崩れ、長屋2棟(計4戸)とその敷地が崩落した問題に進展があった。敷地に隣接する道路の安全を確保するために擁壁を新設する本格復旧工事の実施などを巡って対立していた市と土地所有者が、大阪地方裁判所の勧告を受け入れて22年6月9日に和解した。

擁壁が崩壊した大阪市西成区の住宅地。写真は応急復旧工事を済ませた状況(写真:住民提供)
擁壁が崩壊した大阪市西成区の住宅地。写真は応急復旧工事を済ませた状況(写真:住民提供)
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2021年6月に擁壁が崩壊したときの様子。右手の3階建て住宅は崩落を免れたが、倒壊の危険性が高かったので市が引き倒して撤去した(写真:住民提供)
2021年6月に擁壁が崩壊したときの様子。右手の3階建て住宅は崩落を免れたが、倒壊の危険性が高かったので市が引き倒して撤去した(写真:住民提供)
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 この事故で市は、崩落こそ免れたものの倒壊の危険性が高かった建物を引き倒して撤去し、擁壁のさらなる崩壊を防ぐための応急復旧工事を実施。土地所有者6人に対し、応急復旧工事費用のうち崩落物撤去費用などとして計約2600万円の支払いと、市が本格復旧工事を実施することを認容するよう求めていた。

 しかし、土地所有者側の弁護士と市との話し合いで折り合いが付かなかったため、市は22年2月9日、本格復旧工事の認容を求めて大阪地裁に仮処分を申し立てた。

 大阪地裁が示した和解勧告は3項目から成る。まず、土地所有者は市に土地を寄付する。次に、市がこれまで立て替えていた崩落物の撤去費用の支払い請求権を放棄。さらに、応急復旧工事と本格復旧工事に要する費用を市が負担する。市は和解に関する議案を市議会に提出。22年5月25日に可決された。