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 国土交通省は2022年6月21日、7月1日から入札手続きを開始する原則全ての官庁営繕工事で遠隔臨場を実施すると発表した。遠隔臨場は、発注者側の監督職員による立ち会いや協議、検査などにウェブ会議システムなどを利用することを指す。本格導入によって受発注者の負担軽減を図る。

遠隔臨場の機器構成のイメージ。機材などは受発注者間で協議のうえ、受注者が手配し、発注者が費用を負担する(資料:国土交通省)
遠隔臨場の機器構成のイメージ。機材などは受発注者間で協議のうえ、受注者が手配し、発注者が費用を負担する(資料:国土交通省)
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 国交省大臣官房官庁営繕部整備課建築技術調整室の田崎俊宏課⾧補佐によると、同省では20年度に13件、21年度に19件の工事で遠隔臨場を試行。「発注者の移動時間短縮や急な確認要請への対応、受注者の資料印刷や感染症対策といった手間が省けて効率化につながった」(田崎課⾧補佐)

 国交省は試行結果を踏まえて22年6月15日に実施要領を公開。公共建築工事標準仕様書などで監督職員の立ち会いなどを求めている項目が、遠隔臨場に適しているかどうかをまとめた「遠隔臨場に関する適応性一覧表」も作成した。

 遠隔臨場を実施するに当たって、受注者はまず、実施計画書を作成する。遠隔臨場を実施する工種や確認項目のほか、動画撮影用のカメラやウェブ会議システムなどの仕様、実施方法などを記載し、監督職員の確認を受ける。

 遠隔臨場で確認する項目などについては、「適応性一覧表」を参考にできる。例えば、鉄骨工事では高力ボルトの接合や建て方など見た目で分かりやすいものを「遠隔臨場に向いている」とする一方、溶接接合については仕上がり具合の確認が困難な場合があるため「基本的に遠隔臨場に向いているが一部向かないものがある」としている。また、仮設工事のように網羅的な確認が困難なものなどは、「基本的に遠隔臨場に向かないが条件がそろえば遠隔が可能」とした。

 カメラなどの機材は受注者が手配し、発注者が費用を負担する。実施要領では動画撮影用カメラなどの仕様について参考値を示した。例えば、カメラの標準画素数は1920×1080ピクセル以上、ウェブ会議システムの映像・音声の転送レートは平均3Mbps以上としている。田崎課⾧補佐は、「試行では一般に普及しているウェブ会議システムで十分に対応できた」と話す。