国土交通省は2022年6月15日、民間工事を手掛ける建設会社を対象として実施した工期の実態についての調査結果を公表した。発注者や元請け建設会社が提案した工期に対し、二次以降の下請け工事を主とする企業の4割が「工期が短い」と回答した。
調査は22年3月にインターネットで実施。調査対象は建設業法で規定する建設業者団体の会員。回答した企業は1933社で、矛盾する回答などを除外した有効回答は1471社だった。20年9月以降に請け負った工事に限定して調査した。
発注者や元請け建設会社が提案した工期について、調査結果全体では「短い工期が多かった」が29.2%、「著しく短い工期が多かった」が1.6%で、計30.8%となった。一方で、二次以降の下請け企業では「短い工期が多かった」が37.2%、「著しく短い工期が多かった」が7.7%で計44.9%。重層下請け構造において、請負階層が深くなるほど工期を短いと捉えている実態が明らかになった。
国交省は、元下間の片務性が生じている可能性があると分析する。対等な立場による合意がなされず、下請け企業への負担が過大となっている。国交省建設業課の平山耕吏企画専門官は、「元請け会社の要求には、下請け会社に対する期待や甘えが含まれているようだ。一方、下請けには元請けからの要求に対する慣れやあきらめがあり、本音を言わない態度が見受けられる」と指摘する。
工期の設定方法を調査した質問では、二次以降の下請け企業は「注文者の意向を優先し協議は依頼しないことが多い」が29.5%、「注文者の意向が優先され、協議は依頼しても応じてもらえないことが多い」が21.8%となった。
計51.3%の企業が発注者と協議せず、当初工期のまま契約している結果となった。
契約の際に「工期に関する条件」が明示されていたかどうかも調査した。二次以降の下請け企業では「ほとんど明示されない」が26.9%、「あまり明示されない」が32.1%となり、計59.0%が条件不明瞭のまま契約内容を受け入れていることが分かった。
20年10月施行の改正建設業法で、著しく短い工期による請負契約が禁止された。24年4月1日には、建設業における時間外労働の上限規制が始まる。こうした背景のなか、国交省は民間工事における工期設定や休日取得などの状況把握を目的として調査を実施した。
平山企画専門官は「工期設定が休日出勤や長時間労働など他の問題に影響を与える原因となっている。調査結果を分析し、適正な工期設定に対して何が問題なのかあぶり出したい」とアンケートの目的を説明する。国交省は民間工事における働き方改革を推進していく方針だ。