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 建設現場で打設せずに返送された「戻りコン」を、新たに製造した生コンクリートに混ぜ、日本産業規格(JIS)製品として別の現場に出荷していた――。川崎市の小島建材店が出荷した生コンクリートがJISに適合していなかった問題が波紋を広げている。この生コンを使用した住宅など37棟が、建築基準法違反になる恐れが出てきた。

小島建材店の本社。同社は2022年1月7日から2月3日にかけて、製造方法がJISに適合しない生コンを、JIS製品として出荷していた(写真:日経クロステック)
小島建材店の本社。同社は2022年1月7日から2月3日にかけて、製造方法がJISに適合しない生コンを、JIS製品として出荷していた(写真:日経クロステック)
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 建材試験センターが小島建材店に実施した臨時審査で、同社が戻りコンを不正に再利用していた事実が発覚したのは、2022年2月3日のことだった。建築基準法37条では、建築物の基礎や主要構造部などに用いるコンクリートについて、JISへの適合か国土交通大臣認定の取得を求めている。建材試験センターは22年2月21日、問題の生コンの製造方法がJISに不適合だったことを重く見て、同社のJISマーク認証を取り消した。

 不正の発覚後、国土交通省関東地方整備局は同社に対して出荷先リストなどの提出を指示。問題の生コンの出荷時期が22年1月7日から2月3日で、出荷先は東京都内5区市と神奈川県内2市の計30現場だったことを22年6月6日に明らかにした。

国土交通省は、問題の生コンを基礎や主要構造部などに使った建物は建築基準法違反の恐れがあるとしている(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
国土交通省は、問題の生コンを基礎や主要構造部などに使った建物は建築基準法違反の恐れがあるとしている(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
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 小島建材店にヒアリング調査を実施した川崎市建築指導課によると、同社の小島康弘社長は「22年1月上旬の降雪の影響で、出荷先の現場のコンクリート打設作業が急きょ中止になり、新しく製造した生コンに戻りコンを混ぜて別の現場に出荷した」などと説明しているという。

 同社の不正について斉藤鉄夫国交相は22年6月7日の定例記者会見で、「生コンは時間がたつにつれて品質変化が生じるため、時間管理が重要になる。本当にあり得ない話だ」と強く非難した。