東京五輪後の巨大開発として注目を集めているエリアがある。日比谷公園に隣接する内幸町1丁目街区だ。2037年度以降の完成を目指す次世代スマートシティーを構築する予定で、東京電力ホールディングスやNTT、帝国ホテル、三井不動産など10社が事業者に名を連ねる。約6.5haの敷地を3地区に分けて開発する計画だ。
この計画のマスターデザインなどを担当するのは、日本国内の建築設計事務所ではない。英国に拠点を置き、世界で活動する建築設計事務所PLPアーキテクチャーだ。日経クロステックでは、この巨大開発を俯瞰(ふかん)する立場にある同社のリー・ポリサノ代表と相浦みどり担当役員に独自インタビューを実施。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした働き方の大転換も踏まえて、将来のワークスペース整備や街づくりについて尋ねた。(聞き手:浅野 祐一、菅原 由依子=以上、日経クロステック)
PLPアーキテクチャーは東京の中心地において、「マスターデザイン・プレイスメイキングストラテジー」という役割で巨大な街づくりを担います。霞が関や銀座に隣接するエリアでの大規模開発を通して、約30年にわたって経済が停滞する日本にどのような影響を与えたいと考えていますか。
リー・ポリサノ(以下、ポリサノ):停滞を打破するうえで、持続可能な街を構築していくことが1つの解になるのではないでしょうか。街のつくり方自体を変える必要があります。二酸化炭素の排出量やエネルギーの使用量を減らす新しい建築や街づくりが、新しいサプライチェーン(供給網)や仕事を生み出し、経済の面で寄与できると思います。
相浦みどり(以下、相浦):PLPアーキテクチャーがマスターデザインを担当する内幸町のプロジェクトでは、東京に新しい空間をもたらしたい。開発エリアは、銀座や新橋、霞が関といった場で働く東京のブレーンを集めやすい土地です。東京の競争力を高める場所にするだけでなく、ここを共創の場としたいのです。
これまで、東京電力ホールディングスや三井不動産、NTT、帝国ホテルなど事業を進めている10社の方々と話を続けてきました。多様な人と協力しながら、37年度以降の全体完成を目指します。
人が交わる空間として、計画しているビルをつなぐ高さ31mの位置などに共創スペースとなる空間を設けます。31mは、かつて市街地建築物法が規定していた高さ制限と同じ高さです。銀座の街などにも高さ31mのビルは立ち並んでいます。特別な意味を持つ高さなのです。
この共創スペースには緑を多く取り入れ、人が集いやすい環境を構築します。帝国ホテルにはおもてなしの空間、南地区のタワーには健康に配慮した庭、中地区のタワーにはエネルギーやICT(情報通信技術)、街づくりに関する発信の場などを設ける予定です。事業者の強みを出しつつ、重なり合う空間にしたいと思います。
ポリサノ:東京を緑の空間に変えていきたいという思いもあります。日比谷公園や皇居の緑も含めて、ビルが囲む街ではなく、緑が広がる街にしたい。英国・ロンドンには、公園などパブリックスペースが豊富にあります。東京の中心でも緑をつなぐ街を生み出したいと思っています。