環境省は建築物の省エネや脱炭素化に向け、2022年6月20日に環境配慮契約法基本方針検討会建築物専門委員会(座長:野城智也・東京大学生産技術研究所教授)の22年度の初会合を開いた。環境配慮契約法の基本方針を見直し、国や独立行政法人などが委託する建築物に関わる業務でさらなる温暖化ガスの排出削減を進める狙いがある。
政府は20年10月に「2050年カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)」を宣言し、30年度までに温暖化ガスを13年度比で46%削減することを目指している。国土交通省は、住宅・建築物の分野でも省エネ対策などのあり方・進め方の議論を進めている。環境省は、環境配慮契約の推進により脱炭素社会への貢献を図る。
環境配慮契約法は、国や独立行政法人などが委託する業務の契約に対して、経済性に留意しながら温暖化ガスの排出削減などの環境配慮を求める法律。同法第5条が定める基本方針に基づく契約を、環境配慮契約(グリーン契約)と呼ぶ。
建築物に関わる契約の具体的内容は以下の通りだ。設計では、温暖化ガスの排出削減を含む技術提案を求める「環境配慮型プロポーザル方式」を導入した契約などが当たる。維持管理では適切な施設管理による省エネ化や運用時のデータ収集を実施する保守点検業務の契約、改修では施設の改修費を光熱費用の削減分でまかなう省エネルギー改修事業(ESCO事業)の契約が該当する。
同法の基本方針では、設計と維持管理は原則として環境配慮契約とし、省エネルギー改修でも可能な限り導入すると定めている。環境省によると、20年度における同契約の実施率は設計で57.0%、維持管理は27.6%。改修(ESCO事業)の実施件数は、独立行政法人などによる4件だった。
環境省大臣官房環境経済課の田中裕涼課長補佐は「政府が示すカーボンニュートラルの目標を考慮すると、環境配慮契約の実施率はまだまだ低い」と指摘する。
環境省は専門委員会を21年度に設置した。22年度は、環境配慮契約の実施率向上などに向けた具体的な方策を議論し、その内容を環境配慮契約法の基本方針に反映する。10月をめどに改定案をとりまとめる。
6月20日の初会合では、発注業務における企画段階の問題点を議論した。慶応義塾大学理工学部システムデザイン工学科の伊香賀俊治教授は「発注者が求める環境配慮の性能水準に対し、適切な予算措置となっているのか」と疑問を呈した。「設計者による技術提案を絵に描いた餅としないために、求める性能と予算のバランスを発注者が適切に判断し、プロポーザルの条件とする必要がある」(伊香賀教授)とした。
野城座長も「適切な予算措置、性能水準とすることで、幅広い提案を促すことができる。参加者の裾野を広げていく点にも尽力する必要がある」と指摘した。