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 三菱電機と三菱地所は2022年8月1日~5日に、東京・丸の内などの風況(風速と風向)データを計測・可視化する実証実験を実施した。期間中にはゲリラ豪雨や夕立があり、豊富なデータを取得できた。三菱電機はデータの解析結果を基に三菱地所と議論を進め、23年度以降に風況データソリューションサービスの提供を目指す。高所作業時の強風対策など、都市部の風環境の課題解決に取り組む予定だ。

左が常盤橋タワーの外観、右は常盤橋タワーの低層部とTOKYO TORCH Park(写真:三菱地所)
左が常盤橋タワーの外観、右は常盤橋タワーの低層部とTOKYO TORCH Park(写真:三菱地所)
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 実験では、三菱地所が開発を進めるJR東京駅前の常盤橋エリアと、大手企業の本社ビルなどが集中する大丸有エリア(大手町、丸の内、有楽町)を対象とした。21年6月に竣工した高さ約212mの常盤橋タワーの屋上と、タワーの足元にあるTOKYO TORCH Parkにドップラーライダーを1基ずつ設置してデータを取得した。

 ドップラーライダーとは、レーザー光を空間に照射し、大気中のちりやエアロゾルによる散乱光を受信して、遠方の風況を計測する装置だ。常盤橋タワー屋上には、半径1.5kmの範囲の計測が可能なスキャニング型ドップラーライダーを設置し、水平方向の風況を計測。TOKYO TORCH Parkには、鉛直照射型ドップラーライダーと超音波風速計を設置。高さ2m付近の地上風と、5~250mの上空風のデータを計測した。

風況データの計測イメージ。右上がスキャニング型ドップラーライダーで、右下が鉛直照射型ドップラーライダー(資料:三菱電機)
風況データの計測イメージ。右上がスキャニング型ドップラーライダーで、右下が鉛直照射型ドップラーライダー(資料:三菱電機)
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 ドップラーライダーの性質上、遮蔽物でレーザー光が遮られるとデータの取得がうまくいかない。このため、水平方向の計測装置は可能な限り高所に置く必要があった。また、鉛直照射型の計測範囲は40~250mであるため、超音波風速計を併設して地上付近の風況データを補完した。