今後も継続的に関与する――。東京都の環境影響評価審議会(会長:柳憲一郎・明治大学名誉教授)は2022年8月18日の総会で、三井不動産などが進める「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」の環境影響評価書案(評価書案)について、小池百合子東京都知事に答申した。答申後も審議会が事業者の取り組みを継続的にチェックすることを盛り込んだ、異例の内容だ。小池都知事は答申を受けて同日、事業者に審査意見書を送付した。
神宮外苑の再開発は、4列のイチョウ並木に近接する場所に明治神宮野球場を、明治神宮第二球場がある場所に秩父宮ラグビー場を移転する計画だ。事業者が示した当初計画では、工事に支障のある既存樹木971本を伐採し、70本を移植するとした。
ところが、大正時代に国民が献木や献金をして植えられた樹木を伐採する計画に対して、一部の都民や専門家から見直しを求めるが声が噴出。審議会第一部会は評価書案に記載された既存樹木の保全方法などが不十分であるとして5月26日の総括審議での結論を持ち越し、審議を継続していた。
総会に先立つ8月16日の審議会第一部会に事業者が提出した評価書案では、971本だった伐採本数を556本に減らした。併せて、当初計画で70本だった移植本数を210本(移植検討中の19本を含む)に、340本だった存置本数を615本にそれぞれ増やした。
当初計画で伐採対象に含めていた85本を、詳細調査を踏まえて「移植」に変更。併せて、伐採対象としていた311本の「枯損木」(事業期間中に立ち枯れるなどして、安全管理のために伐採する可能性のある樹木)を存置または移植に振り分けたのだ。
このほか事業者側は、神宮球場に近接する予定のイチョウ並木の保全方法も追加した。着工前にイチョウ並木の根の状態を調べ、それに対応した扁平(へんぺい)基礎などを採用する内容だ。根の保全が困難な場合は、神宮球場の壁面を後退させることを提案した。