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 清水建設は、カメラ画像から火災を検知するAI(人工知能)と、IoT(モノのインターネット)による消火装置の制御技術を組み合わせた新たな防災システム「慈雨(じう)」を開発したと2022年8月29日に発表した。火災の早期発見と、出火部位に的を絞った放水による早期消火で、文化的価値の高い伝統木造建築物の防災対策を強化する。

清水建設が開発した「慈雨」のイメージ(出所:清水建設)
清水建設が開発した「慈雨」のイメージ(出所:清水建設)
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 開発したシステムでは、AIがカメラ画像から炎や煙、人の不審な動作などを自動判別機能で分析する。30m先にある7cm角の範囲を検知できるので、火災の早期発見や放火の防止に役立つ。加えて、出火部位に限定して消火装置を稼働させることで、限られた消火用水で効果的に消火できるようにした。放水銃には扇形の放水ノズルを装着することで、水圧によって建物を損壊するリスクの軽減を図った。

 従来の防火システムの多くは、物体の燃焼時に発生する炎の放射エネルギーと光のちらつきを炎センサーで検知していた。これらのセンサーは、30m先にある15cm角の範囲までしか検知できないため、炎がある程度大きくならないと反応しないことが課題だった。また、消火時には敷地内にある放水銃などの消火装置が一斉に稼働するため、消火用水の容量不足や、放水銃の高い水圧による建物の損壊リスクも問題になっていた。