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 竹中工務店が開発し、子会社の朝日興産(大阪市)を通じて2019年6月に提供を開始した「位置プラス」シリーズは、安価なIoT(モノのインターネット)技術で位置情報を取得する「位置認識プラットフォーム」と、取得した情報を活用して元請け会社の現場監督の仕事を効率化する4つの「業務アプリ」から成る。2022年9月中旬時点で28社が導入した。前編に続き、ヒットの秘密を探る。

 業務アプリのうち、高所作業車(以下、高車)の配車を効率化する「高車管理」については前編で詳しく説明した。では、高車以外のレンタル品はどうか。それらを効率的に管理するためのサービスが「レンタル品管理」アプリだ。大きな建設現場では、工具など3000点ものレンタル品を取り扱うことがある。これらは高車と同様、元請けがレンタル会社から一括で借り受け、協力会社に無料で貸し出している。

 自分たちの懐が痛まないので、協力会社は元請けに対して遠慮なくレンタルをリクエストしてくる。多忙な現場監督は、本当に必要かどうかを精査することもできず、言われたとおりに借りてしまう。こうして現場には、不要なレンタル品の山が築かれていく。

レンタル品の早期返却によるコスト削減効果のイメージ(出所:竹中工務店)
レンタル品の早期返却によるコスト削減効果のイメージ(出所:竹中工務店)
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 協力会社に支給したレンタル品の行方が分からなくなることも少なくない。ある日、コードリール(ドラム型の本体に巻き取り可能な延長コード)が300個もなくなるようなことも。他の現場に流用したり、転売したりといった悪質なケースもある。レンタル品管理アプリを使えば、在庫管理や探索、棚卸しを効率化し、無駄な発注を控えたり、返却忘れを防止したりしてコストも減らせる。導入によって、若手社員1人当たりの業務時間を1カ月当たり6.4時間、レンタルコストを同10%、それぞれ削減できる。

 業務アプリにはこのほか、マンションの建設現場で各部屋の工事の進捗を管理する「進捗管理」アプリ、現場内の人の位置を簡単に把握できる「位置プラス探」がある。これらの位置プラスシリーズが、ライバル会社にも受け入れられた理由は、現場監督目線でつくり込んだアプリの「使い勝手の良さ」が第一にある。

 ヒットの理由はそれだけではない。現場ごとに手取り足取り導入をサポートしているほか、メーカーやレンタル会社などに働きかけて現場監督の負担を減らすサービスを提供していることも理由の1つだ。

 例えばレンタル会社には、高車にビーコンを取り付けたり、車両の情報をアプリに登録したりしたうえで現場に納入してもらっている。高車を識別するための番号を記した「看板」を、車体に貼り付けた状態で出荷してもらう有料サービスもある。若手技術者が担うことが多いこまごまとした業務をパッケージ化し、外注する仕組みをつくることで、現場の負担を減らしているのだ。一方、レンタル会社にとっては新たなビジネスチャンスとなる。

 自動車部品メーカーの東海理化やレンタルのニッケン(東京・千代田)などと開発し、22年5月に発表した高車管理向けの「キーレスシステム」もその1つだ。アプリの予約機能と、デジタルデータを基に利用者を認証して鍵を開閉する「デジタルキー」を連動させることで、スマホを通じて高車を解錠できるようにした。面倒な鍵の貸し借りが要らなくなる。

写真中央が外付けキーレスデバイス。建設現場への搬入前に、高所作業車の鍵に取り付けておく。スマホからの信号に基づき解錠する(写真:日経クロステック)
写真中央が外付けキーレスデバイス。建設現場への搬入前に、高所作業車の鍵に取り付けておく。スマホからの信号に基づき解錠する(写真:日経クロステック)
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