通風・日射を生かす建物配置と太陽光発電でZEHを実現
建物の形状は、風の流れや日射にも配慮している。隣家の外壁からずらした外壁がウインドキャッチャーとなり、建物中央のダイニング部分を風が吹き抜ける。前出の石本氏は「住空間に快適な速さの風が流れるように検討し、窓の開き勝手にも工夫している」と説明する。
ダイニング部分は真南に面し、冬場は日照を最大限に取り込む。広めの土間に蓄熱し、暖房負荷を軽減する。夏は日差しを遮るよう、南側の庭に落葉樹のカリンを植えた。
ZEHにするため、屋根には太陽光電池を載せている。「最も発電効率が高い勾配は30度だが、それでは2階子ども室の天井が低くなり過ぎる。発電効率と住空間のバランスを考えて約20度に決めた」と石本氏。
販売を前提としているため、建築予算に限りがあること、JR九州住宅の施工規格に合わせる必要があることから、工事費調整と構造設計にはかなり苦労を重ねたようだ。前出の樋口氏と石本氏は週に1度のペースで工事監理のため現場に通った。
樋口氏は「建築は1人ではできないことを実感し、設計案に多くの人が関わって社会性を帯びていく過程を体験できたことが大きな収穫だった。建築家とハウスメーカーの考え方や立場の違いを知ることもできた」と振り返る。今後は環境の検証にも関わっていきたいと抱負を述べた。
完成見学会の時点で販売時期は未定。「成果によっては、第2弾、第3弾のBeCAT連携プロジェクトも検討したい」と、プロジェクトを担当したJR九州住宅営業設計部課長代理(当時)の吉岡大貴氏は語った。