2022年11月上旬に上場建設会社大手4社の23年3月期第2四半期決算(単体)が出そろった。鋼材価格などの高騰が建築事業の粗利率を押し下げた。これ以上の粗利率の低下を避けるため、各社は「採算を重視した受注を徹底している」と口をそろえる。
建築の売上高はおおむね好調だ。清水建設、鹿島、大成建設の3社が前年同期比20%以上の増収だった。清水建設と鹿島はそれぞれ5000億円を超えている。唯一減収だった大林組にしても、前年同期比2.3%減の約4913億円だった。
建築の受注高は増加と減少で半々に割れた。鹿島と大成建設がそれぞれ前年同期比50%以上の増加だった一方、清水建設は同2.2%減、大林組は同15.0%減だった。増加率のトップは、64.9%増の約6047億円を受注した鹿島。半導体や医薬品の生産施設などで旺盛な建築需要を捉えたほか、「横浜市旧市庁舎街区活用事業」や「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)2街区」といった大型の再開発工事を複数受注したことが大幅増につながった。
目立ったのは利益面での苦戦だ。建築工事の採算性を表す完成工事総利益率(粗利率)を見ると、大林組を除く3社は、受注競争の激化などの影響で採算が悪化した前年同期からさらに低下した。特に大きく落ち込んだのは大成建設で、前年同期比2.4ポイント減の5.9%だった。
利益率悪化を理由に役員報酬を返上するなど、22年3月期に辛酸をなめた大林組は、上場大手4社で唯一、粗利率を改善し、前年同期比2.3ポイント増の7.5%だった。ただし、22年8月に発表したばかりの通期業績予想は下方修正している。建築の粗利率は当初の予想より0.7ポイント低い8.0%、650億円を見込んでいた営業利益は510億円になる見通しだ。
上場大手4社の粗利率(建築)の通期予想は5.9~8.5%。コロナ禍の影響などを受ける前、19年度までは各社とも10%以上で推移していたが、この2年間で急低下している。今期、建築の粗利率を押し下げている要因として各社が挙げたのは、鋼材などの価格高騰だ。