島根大学総合理工学部建築デザイン学科の清水貴史准教授らの研究グループは、転倒時の衝撃を緩和する性能と歩行性を両立させた畳床「MIGUSACARE」を開発した。従来の畳より薄く、フローリングの上に置き敷きできるので、室内の安全対策を手軽に講じることができる。プラスチック製品の製造・販売を手掛ける積水成型工業(大阪市)と共同で開発した。価格は2022年12月1日時点で非公表。23年1月から販売を開始する。
開発した畳床は83cm角の正方形で、厚さは23mmだ。半畳ほどのサイズで、厚さも従来の畳の半分以下に抑えた。断面構成は、表層から順に畳のシート、芯材、緩衝材となっている。表層はポリプロピレン樹脂による繊維を編んだもので、い草よりも滑りにくい。芯材には、剛性の高いMDF(中密度繊維板)を採用。踏み込んだときに沈みすぎないようにして歩行性を確保した。湿気による変形を防ぐため、両面にアルミ箔を貼り付けている。緩衝材には、医療用包帯などで使用する特殊な不織布を使用している。
清水准教授は、「芯材と緩衝材の組み合わせの発見が大きな研究成果だ。転倒時に床材が局所的に沈むほど柔らかいと緩衝性能を発揮しにくい。歩行性も悪く、つまずきの原因になる。そこで、衝撃を面的に受け止めるような、硬い面材と軟らかい緩衝材の組み合わせをいくつも検証して現在のかたちに至った」と説明する。不織布の詳細は、技術的なノウハウのため非公表とした。
開発した畳床の性能は、衝撃緩和型の畳床について規定したJIS A 5917に基づき測定した。人間の頭部を模した重さ3.75kgの模型を高さ20cmから自由落下させ、重力加速度(G値)を測定する。JIS(日本産業規格)では50G以下を推奨している。開発した畳床は42Gだ。従来の畳や、クッションフロアなどと比較しても高い性能を示した。
清水准教授が床材の緩衝性能に着目した研究に着手したのは17年ごろ。転倒・骨折が原因で要介護になるケースが増えるなか、床材の選択肢が少ないことに課題を感じていた。「表層に木質系の材料も検討したが、現段階では総厚を一般的なフローリングの厚さである15mm程度まで抑えるのが困難だった。そこで、比較的厚さを許容できる畳床として開発した。技術的には芯材と緩衝材の層はもっと薄くできるはずなので、今後はフローリング材の開発にも挑戦したい」(清水准教授)