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 東京都港区は2022年12月5日、「港区ならではの清潔できれいな公衆便所のあり方策定支援業務」公募型プロポーザルで、申し込みがあった4者から日建設計を選定したと発表した。企画提案書を作成したのは畑島楓氏だ。

 日建設計のNAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)でコンサルタントとして働く傍ら、トランスジェンダーの当事者としてLGBTQ(性的少数者)を社会に理解してもらう活動に取り組む。2つの顔で社会を変えようと奔走している。

日建設計の畑島楓氏。1993年生まれ、2019年3月慶応義塾大学大学院を修了。19年4月に日建設計に入社、新領域開拓部門新領域ラボグループNAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)でコンサルタントを務める。ファッションモデル「サリー楓」としても活躍。映画やCMなど多数のメディアに出演している(写真:山田 愼二)
日建設計の畑島楓氏。1993年生まれ、2019年3月慶応義塾大学大学院を修了。19年4月に日建設計に入社、新領域開拓部門新領域ラボグループNAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)でコンサルタントを務める。ファッションモデル「サリー楓」としても活躍。映画やCMなど多数のメディアに出演している(写真:山田 愼二)
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 港区が求めている事業の内容は主に2つだ。区内31カ所にある公衆トイレ全体の将来における在り方を示すこと。31カ所の1つであり、リニューアルが決まっている新芝橋際の公衆トイレについて、設計条件とコンセプトを定めることだ。契約期間は約5カ月、事業規模は最大1200万円としている。

 畑島氏は今回のプロポーザルのカギをこう説明する。「港区はオフィスや高級住宅、商業施設などが集まった多様性のあるエリア。そこに点在する31カ所の公衆トイレに対して、全体を束ねるプロトタイプのようなものを求められた。形や色、利用者の属性などで公衆トイレの在り方を1つに定めるのは難しい」

 目を付けたのは敷地条件だ。周囲を建物に囲まれているのか、広場に独立して立っているのかなどによって、31カ所の公衆トイレの敷地を4パターンに分類。それぞれのパターンに合わせて適切なトイレブースの配置計画を用意すると提案した。

「港区ならではの清潔できれいな公衆便所のあり方策定支援業務」公募型プロポーザルで日建設計の畑島氏が提出した企画提案書から抜粋。敷地条件に応じてトイレブースの配置を決め、エリア特性に応じて公衆トイレの外装デザインや機能に変化を付ける(出所:東京都港区)
「港区ならではの清潔できれいな公衆便所のあり方策定支援業務」公募型プロポーザルで日建設計の畑島氏が提出した企画提案書から抜粋。敷地条件に応じてトイレブースの配置を決め、エリア特性に応じて公衆トイレの外装デザインや機能に変化を付ける(出所:東京都港区)
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 配置計画の例としてプロポーザルの段階では回遊型、並列型、分散型を挙げているが、「可能性はまだまだある。どのような型が適切なのか、さらに検討していく」と畑島氏は意気込みを語る。

 公衆トイレの外装デザインや、備える機能はオフィス街や住宅地といったエリア特性に応じて特徴付けする。評価軸を明確にするため5角形のレーダーチャートを使用。防犯、ランドマーク性、防災、しつらえの多様性、維持管理の観点で特徴付けの指針を決める仕組みだ。

 今回のプロポーザルは上司から「1人で挑戦してみないか?」と声を掛けられたという。締め切り期限のわずか4日前のことだ。A4用紙6枚の企画提案書を作成するのに、かけられた時間は3日間。それでも畑島氏は、「普段から考えているテーマだった。何が論点になるのかすぐに分かったので、頭の中にあることを文字に起こすだけだった」と振り返る。