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 鹿島は2022年12月12日、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)によって生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」の3つ目のモデル現場を報道陣に公開した。建設ロボットや遠隔管理システムなど、計19項目の新技術を導入している。

「鹿島スマート生産ビジョン」の3つ目のモデル現場「大宮桜木町1丁目計画」。外装工事、屋上工事、基準階の内装工事、電気設備工事などが進んでおり、1日に約210人の作業員が現場に入っている。工事の最盛期には300人ほどになる見込みだ(写真:日経クロステック)
「鹿島スマート生産ビジョン」の3つ目のモデル現場「大宮桜木町1丁目計画」。外装工事、屋上工事、基準階の内装工事、電気設備工事などが進んでおり、1日に約210人の作業員が現場に入っている。工事の最盛期には300人ほどになる見込みだ(写真:日経クロステック)
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 公開したのは、さいたま市のJR大宮駅付近で工事が進む「大宮桜木町1丁目計画」の現場。オフィスや店舗、駐車場から成る複合ビルで、鉄骨(S)造の地上13階建て。延べ面積は約2万700m2だ。鹿島が設計・施工を担当している。21年10月に着工し、現場公開時の出来高は約75%。竣工は23年5月を見込む。

システム天井施工ロボット。上部の「機能部」と下部の「台車部」で構成する。天井ボードをストックするユニットを一体化させている(写真:日経クロステック)
システム天井施工ロボット。上部の「機能部」と下部の「台車部」で構成する。天井ボードをストックするユニットを一体化させている(写真:日経クロステック)
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 この日、初めて公開したシステム天井施工ロボットは、スマート生産のビジョンの1つである「作業の半分はロボットと」を具現化したもの。針を備えたロボットアームで天井ボードを保持し、システム天井を組み立てていく。ロボットは従来の人による作業の約半分を、人と同等の品質で施工できる。移動式足場を組む必要がないので、工事用エレベーターで搬送する仮設資材の量と作業員の高所作業を大幅に削減できた。

 課題は作業スピードだ。今後さらにスピードアップを図り、従来と同じ工期で作業員数を半減できるよう改良する。

吊(つ)りボルトの施工ロボット。台車部分はシステム天井施工ロボットと共通で、与える仕事に合わせて「手先」に当たる機能部を付け替える(写真:日経クロステック)
吊(つ)りボルトの施工ロボット。台車部分はシステム天井施工ロボットと共通で、与える仕事に合わせて「手先」に当たる機能部を付け替える(写真:日経クロステック)
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 耐火被覆吹き付けロボットは、現場での使い勝手を改善した新型を披露した。20年11月に報道公開した2つ目のモデル現場「横濱ゲートタワー」(横浜市)で導入していた旧型では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のデータを使って梁(はり)の形状などを入力しており、事前準備の負荷が大きかった。

 新型では、ロボットに搭載した3次元レーザースキャナーで梁の形状を認識するシステムに変更。現場にロボットを配置して作業前にスキャンするだけで済むので、準備の負荷が大幅に削減できた。

耐火被覆吹き付けロボットの最新型。3次元レーザースキャナーで梁部材を認識し、形状に応じてロボットアームを動かす。人による作業よりも吐出量を増やせるので、スピーディーに被覆できる。具体的な歩掛かりは今後、精査する(写真:日経クロステック)
耐火被覆吹き付けロボットの最新型。3次元レーザースキャナーで梁部材を認識し、形状に応じてロボットアームを動かす。人による作業よりも吐出量を増やせるので、スピーディーに被覆できる。具体的な歩掛かりは今後、精査する(写真:日経クロステック)
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米ボストン・ダイナミクス製の四足歩行ロボット「スポット」。モデル現場では、現場の遠隔管理に活用した。背中部分に360度カメラと3次元レーザースキャナーを搭載し、指定したルートを人の代わりに自動巡回した。現場と工事事務所が400mほど離れていたため、業務の削減につながった(写真:日経クロステック)
米ボストン・ダイナミクス製の四足歩行ロボット「スポット」。モデル現場では、現場の遠隔管理に活用した。背中部分に360度カメラと3次元レーザースキャナーを搭載し、指定したルートを人の代わりに自動巡回した。現場と工事事務所が400mほど離れていたため、業務の削減につながった(写真:日経クロステック)
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