設計時の想定以上の乾燥収縮と温度伸縮が生じたことで、竣工からわずか8カ月後に、外装ルーバーに複数の損傷が見つかった千葉県市川市の第1庁舎。山下設計(東京・中央)と竹中工務店、大城組(千葉県市川市)が実施していた庁舎南側の是正工事が2022年11月20日に完了した。工事では、ルーバーの全ジョイント部に誘発目地などを設けたことが日経クロステックの取材で判明した。
市川市第1庁舎は、設計・監理を山下設計が、施工を竹中工務店・大城組JV(共同企業体)が手掛けて20年7月に竣工した。日射による空調負荷を減らすために南側全面に設置したプレキャストコンクリート(PCa)版の水平ルーバーが、意匠面での特徴にもなっている建物だ。
水平ルーバーは、1枚当たり長さ約5.3m、幅約66cm、厚さ28cmのPCa版をつなぎ合わせたもので、全長約100m。庁舎南側の外装には、このルーバーを13段設置している。ルーバーは建物側から張り出したT形鋼で支持。PCa版とT形鋼のジョイント部にはスタッドジベルやシアキー(ずれ止め)を配し、無収縮モルタルを充填していた。
不具合が発覚したのは21年3月のことだ。市民からの指摘を受けて市が調査したところ、PCa版の端部などに建物全体で数十カ所の損傷が見つかった。損傷は「PCa版の端部に生じた亀裂」と「PCa版と無収縮モルタルの継ぎ目に生じたひび割れ」の2パターンだ。
問題の発覚後、市は建築研究振興協会(東京・港)に調査を依頼。同協会は22年5月、PCa版の乾燥収縮や温度伸縮が原因だとする報告書を市に提出した。調査結果を受けて山下設計と竹中工務店・大城組JVは、22年6月から是正工事に着手。PCa版とT形鋼のジョイント部のモルタルの一部や、PCa版の端部を除去して誘発目地や膨張目地を形成し、高靭性ウレタン塗膜防水を施した。