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 工学院大学建築学科の田村雅紀教授らの研究グループは、炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とするホタテの貝殻を細骨材に用い、二酸化炭素(CO2)を固定するコンクリートを開発した。共同開発者の高橋カーテンウォール工業が手掛けるプレキャストコンクリート製カーテンウオール製品への適用を目指す。

写真左がホタテの貝殻を砕いてつくった細骨材。コンクリート材料のうち、砂と置き換える。右がコンクリートの試験体で、色の濃いものがシリカフュームを添加したもの(写真:日経クロステック)
写真左がホタテの貝殻を砕いてつくった細骨材。コンクリート材料のうち、砂と置き換える。右がコンクリートの試験体で、色の濃いものがシリカフュームを添加したもの(写真:日経クロステック)
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 ホタテ貝は、海中のCO2を吸収して炭酸カルシウムの殻をつくる。貝殻を砕いてつくった細骨材(以下、貝殻砂)は、主成分の90%以上が炭酸カルシウムで、その質量のうち約44%をCO2が占める。コンクリートを構成する水、セメント、細骨材、粗骨材のうち、細骨材を貝殻砂に置き換えることで、コンクリート内部にCO2を固定し、建材の分野からカーボンニュートラルに貢献する狙いがある。

 開発したコンクリートでは、貝殻砂の混入量を細骨材の約70%に抑えた。貝殻砂の割合を増やしすぎるとコンクリート中の空気量が増え、流動性や強度の低下を引き起こすためだ。粒径の小さいシリカフュームを添加することで、コンクリートに混入する空気量を抑え、密実性を高めて性能の低下を防いでいる。セメントは、プレキャスト製品への応用や工期短縮によるCO2排出量削減効果に配慮し、1日で強度が発現する早強ポルトランドセメントを採用した。

貝殻砂の量とコンクリートを圧縮破壊するエネルギーの関係。強度を出すには約7割を置換するのが最適と判断した(出所:高橋カーテンウォール工業)
貝殻砂の量とコンクリートを圧縮破壊するエネルギーの関係。強度を出すには約7割を置換するのが最適と判断した(出所:高橋カーテンウォール工業)
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 貝殻砂の割合やシリカフュームの添加量は、工学院大学の試験場で検証。高橋カーテンウォール工業の製品で使用しているコンクリートと同等の設計基準強度30N/mm2を確保できることを確かめた。

 同社執行役員の佐々木哲也技術部長は、数年前からコンクリート製カーテンウオールを取り巻く状況に危機感を持っていた。「高層ビルのカーテンウオールはガラス製がほとんど。コンクリート製のものはエントランスなど一部でしか使わないのが現状だ。脱炭素への貢献を付加価値にして、新しいカーテンウオールをつくりたい」(佐々木技術部長)